非デザイナーが留意すべき改善ポイントとは? 見た目で損をしないための「伝わる企画書デザイン」

公開日:2026年3月31日

  • 高橋佑磨氏(千葉大学)

「見た目」か「中身」か。スライドや企画書を用いてプレゼンテーションを行う際、もっとも重要なのは言うまでもなく「中身」だ。しかし、優れた実績や提案、アイデアをもっていても、それが適切に相手へ伝わらなければ、相手の心を動かすことはできない。そこで重要になるのが「見た目」だ。情報を短時間で正確に伝え、情報の価値や魅力を劣化させずに相手に届けるためには、企画書の読みやすさや見栄えも重要になる。
本記事では、研究活動に欠かせないプレゼンテーションや資料作成に役立つデザインルールを発信してきた千葉大学の高橋佑磨氏が、広告クリエイターのプレゼンテーションにおける、“優しい”企画書・資料デザインの基本を解説する。

伝えたい情報を正確かつ円滑に届けるためには、聞き手の多様性にも配慮しつつ、資料の見づらさや読みづらさを徹底的に排除することが重要です。認知負荷の高い資料では、聞き手の集中が途切れ、内容が十分に伝わりません。

一方で、見やすい資料を参考にしても思うように整わないことがあります。これは、見やすさの理由を十分に理解しないまま、表面的に真似ているだけだからです。AIが資料作成を支援する時代でも、仕上げにはデザインの基礎知識が欠かせません。本稿では、受け手に優しい資料を作成するために、非デザイナーがとくに留意すべき点をまとめ、お伝えしたいと思います。

1. 内容に即したレイアウト

まず、資料の中の情報は、すべて並列ではなく構造をもっています。見出しやキャッチコピー、キーメッセージなどは重要度の高い情報ですが、補足説明や注釈はそれほど重要な情報ではありません。資料をつくるときは、情報の重要度に応じて各情報の目立ちやすさを変えることが大切です。このとき、メリハリも意識する必要があります。

ただし、重要度に応じて文字サイズを際限なく設定するとコントラストが曖昧になり、受け手は要点をつかみにくくなります。通常の資料では、文字サイズのバリエーションは明確に区別できるよう、2~3段階に絞るのがよいでしょう。

2. フォント

フォントは、資料の読みやすさと印象を左右する重要な要素です。インターネット上には多くのフリーフォントが公開されており、Google Fontsのように、誰でもすぐにダウンロードしてフォントを使えるプラットフォームも整備されています。

企画書などのプレゼン資料は文字数が少ないことが多く、フォントはゴシック体が基本になります。最近の標準搭載フォントでは、メイリオ、游ゴシック、BIZ UDPゴシック(Windowsのみ)、ヒラギノ角ゴシック(Macのみ)などが有力な選択肢になります。フォントを適切に使えば、内容の魅力を視覚的にも引き立てられます。

3. 行間と字間

PowerPointなどの初期設定では、日本語入力時の見かけの行間が狭く設定されていることが多く、可読性を損なう要因になります。行間は可読性を左右する重要な要素であり、0.5~1文字程度の空白が確保されるよう調整するのが望ましいです。

一方で、おすすめのフォントとして挙げたメイリオやBIZ UDPゴシック、またNoto Sans JP、LINESeed JP、IBM Plex Sansなどは、見やすさを重視してデザインされているため、1文字あたりがやや大きめです。

そのため、初期設定のままでは文字が窮屈に並び、読むときの負担が大きくなることがあります。こうした場合は、文字サイズに対して5~10%程度の文字間隔を設置すると読みやすさが大きく向上します。

4. 色数とカラーバリアフリー

モノクロの資料は手抜きに見えがちです。とはいえ色を多用すると、資料全体のまとまりが失われるだけでなく、認知負荷が高まり、内容の理解を妨げることも。一般的な資料では、白・黒・グレーなどの無彩色を除き、使用色は2色までに抑えるのが無難です。さらに、2色のうち1色はアクセントとして限定的に使い、基本は1色を基調にすると見やすい資料になります。

また、グラフなどを2色に塗り分ける場合、「赤と緑」「緑とオレンジ」「青と紫」などの組み合わせは好ましくありません。一方、「青と黄色」「青とオレンジ」「紫と緑」などの組み合わせは、比較的判別しやすく、適した組み合わせです。

5. 余白

資料の余白は、受け手のストレスを軽減し、可読性を高めるうえで重要です。スライドの上下左右には、均等に1.5文字分程度の余白を設けることが基本です。また、図と文字の間にも余白を確保しましょう。



本稿で紹介したテクニックは、あらゆる資料作成の基本となるものです。ただし、これらのテクニックだけでは、見た目の奇抜さやインパクトには欠ける資料になるかもしれません。聞き手をワクワクさせ、心をより動かすような資料にするには、もうひと工夫が必要だともいえます。

とはいえ、それらの工夫が効果的に機能するかどうかは、基本を守れているかにかかっています。「伝わる資料」づくりの第一歩として、本稿を活用いただきたいと思います。

千葉大学理学部
教授
高橋佑磨氏

1983年、東京都生まれ。2010年、筑波大学大学院生命環境科学研究科修了、博士(理学)。専門は進化生態学。種内に存在する多様性の進化機構や機能を研究。資料作成に必要なデザインのノウハウを普及することを目的にウェブページ「伝わるデザイン」を開設、運営。著書に「伝わるデザインの基本」など。

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