五感に働きかけ、仮想の現実感をつくり出す「ヴァーチャル・リアリティ」。マーケティングにおける活用が今、急速に進んでいる。

FIFAワールドカップ・ブラジル大会で行われたコカ・コーラのヴァーチャル・リアリティ体験ゾーン。隣接するマラカーナ・スタジアムのロッカールームと全く同じつくりの部屋で、特別なゴーグルを装着すると、自分がピッチ上に立ってプレーする映像が再生される。試合の最後にはゴールを決め、大観衆から拍手喝采を浴びるところを体験できる。
2000年代に入ってコンピュータやゲーム用に開発され、その後マーケティングにも使用されるようになった拡張現実(AR:Augmented Reality)。拡張現実マーケティングについては、数年前に本コラムでも紹介したが、米マーケティング界の次のトレンド予測として「ヴァーチャル・リアリティ・マーケティングが来るのではないか」と各メディアが報じている。
ARとVRの違いとマーケティングへの活用可能性
拡張現実(AR)は、現実にあるコンテンツに現実にはない情報を付加することでインパクトを与える。それに対してヴァーチャル・リアリティ(VR)は、コンピュータによる五感への働きかけにより、人工的な現実感をつくり出すことができる。ARが現実世界の一部を改変するものである一方、VRは現実世界と人工的に構築した現実感とを完全に入れ替える技術であると言える。
ARがマーケティング手法としてVRより先に発達した背景には…