寺の長男として生まれ、歴史から哲学の道へ。研究を進めるなかで「私」を包む大きな「WE」という概念に辿り着いた出口康夫さん。現代社会における広告の存在意義や、異質な知性であるAIとの向き合い方について、出口さんに話を聞いた。
「WEターン」の提唱で価値多層社会を目指す
哲学者の出口康夫さんは、哲学の中でも分析アジア哲学、数理哲学を主に研究。「価値多層社会」を目指し、国際的な訴求力を持った運動体を形成することを目的に設立された京都哲学研究所の共同代表理事を務める。また、社会は多元化・多層化していくことが可能だとし、「WEターン」という概念を提唱している。
寺の長男として生まれた出口さんは、寺を継ぐことが当たり前の環境で育ちながらも、継ぐ気は一切なく、幼い頃に親しんだ日本史や古代史に影響を受け、歴史を学ぼうと京都大学に進学することを決めた。しかし、仏教に対する興味をバックグラウンドに、東洋と西洋、2つの考え方に哲学でアプローチしようと、文学部史学科から文学部哲学科へ志望を変更。この転向は、自身のキャリアを左右する大きなものだったと、出口さんは振り返る。
上/『これからの社会のために哲学ができること』(光文社)下/『京大哲学講義AI親友論』(徳間書店)出口さんのこれまでの著書。
大学入学当初から、自分の哲学を確立させることを視野に入れていたという出口さん。2016年頃に、京都学派の哲学や、東洋思想や仏教思想を見直そうと、道元の自己観や、西田幾多郎の後期の自己論など、集中的に研究を進めるなかで、「WEターン」の着想を得た。
その研究では、道元や西田は「自己」を大きな問題として捉えていたことが明らかに...


