生成AIやAI検索の台頭は、生活者の情報探索行動を「能動的なブラウジング」から「AIとの対話」へと激変させつつある。CAREモデルをベースに、不可視化する広告のメカニズムと、これからの時代に求められるリテラシーの境界線について、日本大学商学部准教授の田部渓哉氏が解説する。
日本大学
商学部
准教授
田部渓哉 氏
2009年早稲田大学商学部卒業。2016年同大学大学院博士課程単位取得退学。早稲田大学商学学術院助教を経て2017年より城西大学経営学部助教、2021年より准教授。2024年より現職。専門は広告コミュニケーション。日本広告学会、日本消費者行動研究学会、日本商業学会所属。
コンテンツ体験の阻害とネイティブ広告の倫理的ジレンマ
多くのデジタルコンテンツは、広告を挿入するタイミングを考慮して設計されていません。そのため、ユーザーにとって「区切りの良いタイミング」で広告を表示することが難しく、閲覧や視聴の途中で広告が割り込む場面が少なくありません。その結果、ポップアップ広告やインストリーム広告などの従来型広告は「コンテンツ体験を邪魔された」という負の感情を生みやすいのです。
このような環境では、広告主は広告出稿それ自体がブランドイメージを損なうリスクを負うことになります。一方、プラットフォーマーも、広告を表示しなければ収益を確保しにくく、広告を表示すればユーザー体験を損ないかねないという構造的なジレンマを抱えています。
こうした課題への対応策として登場し、定着したのがネイティブ広告です。ネイティブ広告は、コンテンツの文脈やデザインに自然に溶け込ませることで、ユーザー体験への影響を抑えつつ、広告効果の向上を目指した広告手法といえます。ネイティブ広告は従来型広告に比べてユーザーに受け入れられやすく、高い広告効果を発揮しやすいと考えられています。
例えば、ネイティブ広告黎明期のアイトラッキング調査では、バナー広告と比較して53%多く閲覧されたことが報告されています。また、その後の調査でも、クリック率(CTR)は従来型広告より高い傾向が示されています。
一方で、「ユーザー体験を妨げない広告」は、「広告として意識されにくい広告」と背中合わせの関係にあります。そのため、ネイティブ広告は透明性の欠如という観点から、マーケティング倫理上の課題が指摘されてきました。ネイティブ広告が普及し始めた時期の米国における実験調査では、ネイティブ広告を広告と認識できた実験参加者は平均7%にとどまったと報告されています。
このような低い認識率は、多くのユーザーが広告であることに後から気付き、「だまされた」と感じるリスクを示唆しています。実際、広告であることを認識した時点でブランドへの好意や購買意図が低下する傾向が、多くの研究で報告されています。
PR表記と文脈の違和感 広告認識における2つの経路
それでは、ユーザーはどのようにネイティブ広告を広告として認識しているのでしょうか。CAREモデルは、ネイティブ広告などの「隠蔽された広告(Covert Advertising)」をユーザーがどのように認識・処理し、その結果としてどのような影響が生じるかを体系化した包括的なモデルです【図表1】。同モデルによ...

