土壌学者として土壌の成り立ちや物質循環、植物との相互作用など、土に関わるあらゆる事象を研究している藤井一至さん。テレビ出演や書籍出版などで自身の研究を積極的に発信する藤井さんに、SNSなどのプロモーション活動に取り組むなかで感じているメディアのメリットやデメリットについて話を聞いた。

岩から土に変化する過程に興味 険しい研究者の道を選択
研究材料を求めスコップを片手に世界中を飛び回り、人が立ち入らない場所にも果敢に飛び込む“土のハンター”藤井一至さん。現在は福島国際研究教育機構の土壌ホメオスタシス研究ユニット・ユニットリーダーとして、福島の土壌再建やカナダの永久凍土の温暖化影響予測、熱帯林の植物と土壌の相互作用をテーマに研究を行っている。山と田んぼに囲まれて幼少期を過ごしたという藤井さん。道端に転がる石ころ好きの“石オタク”だったという。やがて漫画『風の谷のナウシカ』などに影響を受け、環境問題や食料問題に関心を持つ。石オタクだった特技が生きるのではと思い、専門を石に近い「土」に定めた。
「私は子どもの頃から石とか岩が好きだったから、すぐに土のプロになれると勘違いしていました。大学生の頃、中国の砂漠化問題への日本人研究者の取り組み(土壌改良技術)に感動して、私もこれをやろうと。『この研究をしたい!』と先生に相談すると、その研究はすでに終わっていると言われてしまって(笑)。アフリカの砂漠化防止など人気の研究テーマに同僚たちが殺到し、残っていたのが、大学の裏山の土の調査研究でした」。
それから苦節10年。岩がどのような過程を経て土になるのか、ようやく腹...