あらすじ
*この作品はフィクションであり、実在の人物・団体・事件などとは一切関係ありません。
医科大学附属病院で手術を受けた73歳の男性が、術後に容体が急変して亡くなった。妻の美智子と息子の亮はその死に納得がいかず、弁護士の藤原俊介のもとを訪れると、外科医の西岡翔太を紹介された。手術記録を確認した西岡は、医療過誤と思われる手順の不手際を指摘する。そして美智子と亮の戦いが始まった。
父の死の真実を知りたい
山本美智子と息子の亮は、弁護士の藤原俊介から外科医の西岡翔太を紹介された翌週、すぐに面会の約束を取りつけた。落ち着いた表情で書類を広げる西岡を見ながら、亮は藤原のもとを訪れたときのことを思い出していた。
「まず、医学的な判断が必要です」二人の顔を交互に見ながら藤原は言った。「判断、ですか?」亮は少し戸惑いながら問い返した。「手術記録や術後経過を分析し、標準的医療手順からの逸脱があったかを確認します。必要であれば、別の医師の意見も求めます」
藤原の話に美智子が小さく息をつく。「それを知ることが、今の私たちには大事なんですね」亮の言葉に藤原は黙って頷き、机の引き出しから数枚の書類を取り出した。
「こちらの医師をご紹介します。西岡翔太という外科医師です。若いですが、医学に対する正確さと倫理観に優れていると僕は思っています」藤原が手にした名刺を亮に渡す。
「若い医師の方……大丈夫ですか?」名刺に視線を落としながら訊いてみる。「経験だけが正義ではありません。必要なのは、事実に忠実であること。彼なら、手術記録を読み解き、過誤の有無を判断できると思います」真剣な表情で藤原が応じた。とにかく前に進みたい。父の死の真実を知りたい。親子は藤原の言葉を信じるしかなかった。
気づくと、西岡は二人の前で手術の記録と論文を次々と照合し始めていた。「山本幸三様の手術記録を拝見しました。いくつか標準手順と異なる点があるようです。というより、あります」「具体的には?」亮が食い入るように尋ねると、西岡は説明を続けた。
「まず、術中の血圧管理が不十分でした。通常なら、血圧が低下した時点で直ちに補正措置を取ります。しかし記録を見る限り、明らかに対応の遅れがあります」亮の隣に座る美智子の手は小刻みに震えている。「それが……亡くなる原因になるんですか?」亮の質問に西岡は視線を落とし、ゆっくりと頷く。「可能性は高いです。さらに……」「さらに何でしょう」美智子が身を乗り出した。
「手術中に行った手順の一部は、患者様の年齢と体力を考えると推奨され...


