複雑化する企業の諸問題に、広報はどう立ち向かうべきか。リスクマネジメントを専門とする弁護士・浅見隆行氏が最新のケーススタディを取り上げて解説する。
電車内でモバイルバッテリー発火
2025年7月20日、JR山手線の車内でスマートフォンを充電していたモバイルバッテリーが発火し、乗客5人がケガをする事故が発生しました。
出火元のモバイルバッテリー「cheero Flat 10000mAh」は、製造元のティ・アール・エイが2023年6月14日以降に製品回収(リコール)を進めていた製品でした。
このケースについて危機管理広報の観点から注目すべき部分は、出火元となったモバイルバッテリーの製造元が確定していないにもかかわらず、ティ・アール・エイは、2025年7月22日に公式Xアカウントで同製品を回収していることを再度告知し、かつ、7月23日に自社サイトにリリースを掲載したことです。製造元が特定された7月24日にも続報を掲載しました。
そこで、今回は、製造元であるメーカーが製品のリコールに取り組んでいる最中に事故が発生してしまった場合の危機管理広報について解説します。
リコール情報が届くとは限らない
メーカーが、事故の可能性があるなどとして製品をリコールすること自体は、決して珍しいことではありません。消費者庁のリコール情報サイト(https://www.recall.caa.go.jp/)などのポータルサイトでは、連日、リコールの情報が新規掲載されています。
リコール件数の多さ故に、メーカ...

