新商品の認知やトライアル獲得に有効なサンプリング。一方で、「配った人がその後購入したのか」「どんな人が、どんなシーンで商品を利用しているのか」まで把握するのは難しい。こうした“配った後”の購買行動まで可視化できるのが、イオンネクストのネット専用スーパー「Green Beans」が提供する「冷凍サンプリング」だ。家庭用冷凍ベーカリー「ここCafe」シリーズでサンプリングを活用したテーブルマークでは、購入者の約9割が新規顧客だったことに加え、特定フレーバーにおいては、想定外の「朝食」需要があることも明らかになった。サンプリングを顧客理解につなげた施策の裏側に迫る。
(左から)イオンネクスト メディアビジネス部 副部長 山本裕司氏、テーブルマーク 戦略本部 マーケティング戦略部 小久保友佳氏、テーブルマーク 戦略本部 マーケティング戦略部チームリーダー 白子裕美子氏、イオンネクスト メディアビジネス部 営業第二チームマネージャー 丸山恭平氏
冷凍食品は「試してもらいにくい」 市場開拓を阻んだトライアルの壁
──新商品の販促で候補に入りやすいサンプリングですが、冷凍食品は温度管理の観点から配布が難しくなります。テーブルマークでも家庭用冷凍ベーカリーのトライアル獲得に課題を抱えていたと聞きました。
小久保:当社は業務用冷凍パンで高いシェアを持っていますが、家庭用冷凍ベーカリー市場はまだ成長途上で、新しい市場を創出していこうとしている段階でした。そこで立ち上げたのが「ここCafe」シリーズです。実際にお召し上がりいただいたお客さまからは高い評価をいただくのですが、「食べる機会がない」「価格に見合う価値があるかわからない」と、“購買までの壁”が高いのが実情でした。既存の冷凍食品の棚に置いておくだけでは、トライアル購入に結びつきにくい課題がありました。
白子:トライアル獲得に加えて、購入者の「データが見えない」ことも課題でした。店頭での試食販売はコストや温度管理の面から頻繁に行えません。実施できたとしても、「試食した方がその後本当に買ってくれたのか」「どんな人がどんなシーンで食べているのか」といった購入後の行動まで追跡するのは難しく、次のマーケティング投資や商品開発の判断材料が不足していました。
──「サンプリングが難しい」「顧客像も見えづらい」という状況をどう解決したのでしょうか。
小久保:イオンネクストが運営するネット専用スーパー「Green Beans」の「冷凍サンプリング」の活用が大きな打開策になりました。冷凍パンを買ったことがない方に試してもらうには、日常的にネットスーパーで冷凍食品を買っているお客さまへアプローチするのが最も効果的だと思います。「これこそ求めていたソリューションだ」と即決でしたね。
「試した人は本当に買ったのか?」 サンプリングの“後”を追跡する
──冷凍食品の試食配布といえば配送や温度管理のハードルが高い印象です。イオンネクストの「冷凍サンプリング」とはどのような仕組みなのでしょうか。
山本:Green Beansは、イオンネクストが運営するネット専用スーパーです。食料品から日用品まで約30,000点以上を常時展開しています。会員さまは関東圏の1都3県を中心とした共働き・子育て世帯が多く、世帯年収1,000万円以上が約3割を占めるなど、品質や利便性を求めるターゲット層が集まっているのが特徴です。
丸山:そもそもGreen Beansはネット専用スーパーですので、生鮮食品や冷凍食品は日常的にお客さまのご自宅へ配送しています。「自社コールドチェーン(低温物流網)」を独自に構築し、鮮度を保つ取り組みも欠かしません。この解凍リスクや品質劣化を生じさせない仕組みを使い、会員さまが購入した冷凍品と一緒にサンプルをショッピングバッグへ同梱してお届けするのが「冷凍サンプリング」です。
山本:「冷凍サンプリング」は、ただサンプルを配って終わりではなく、受け取った後の行動もトラッキングできるのがポイントです。会員IDを辿ることで「サンプル受け取り後の購入有無」「リピート率」「併売品」まで購買行動を追跡・分析できます。
白子:このデータを見られることが「冷凍サンプリング」の活用を決めた理由の1つでした。「顧客像が見えない」という当社にとって、属性はもちろん、受け取り後の継続購入まで時系列でトラッキングできるのは、マーケティングの指針を得るための武器になると思いましたね。ブラックボックスになりがちな「試食から購買・リピートへの転換率」が可視化できることに強い可能性を感じました。
図1 テーブルマークの「冷凍サンプリング」施策
購入者の約9割が新規顧客 データで「朝食需要」を発見
──「冷凍サンプリング」を使い、具体的にどのような施策を行ったのでしょうか。
丸山:本施策は「チョコスコーン」と「紅茶スコーン」の2つで実施しました。期間は1週間です。冷凍食品を注文されたお客さまへ週前半で「チョコ」、後半で「紅茶」と時期を分けて配送し、合計で約5,760個配布しました。
山本:配布期間中や配布後はサイトトップのバナーで告知も行います。サンプルを受け取った方が「買ってみよう」と思ったときにスムーズに移行できる環境を整えるためです。
小久保:本施策で当社が準備したのは二次元コード付きのアンケートのみで、工数はほぼかかりませんでした。それ以上に驚いたのは、インセンティブがないにもかかわらず、約500件(回収率約10%)もの熱量の高い回答が集まったことです。顧客の生の声をスピーディかつ大量に回収できたのは感動しました。
──実際に「冷凍サンプリング」を使用して、新規顧客の開拓にも貢献したと聞いています。
白子:購買追跡データを分析したところ、本商品を購入した方のうち「約9割が初購入の新規顧客」と判明しました。顧客理解にとどまらず、新規顧客の開拓に寄与することが数値で確認できたのは大きな成果です。
小久保:顧客像や利用シーンでも発見がありました。「紅茶」は単身者や大人世代がおやつとして購入する一方、「チョコ」はファミリー層がお子さまと一緒に朝食シーンでまとめ買いされているとわかりました。どちらも元々は「おやつ」用途を想定していたため、実行動データから「朝食」という需要を発見できたことは、今後の商品開発や販促展開における収穫です。
丸山:副次効果としてレビュー件数が1~2件から一気に30~40件へと急増しました。Green Beansでは一度購入されるとカートに入れやすい「お気に入り」に登録されます。そこに好意的な口コミが増えることで、広告を打ち続けなくても自然と売れ続ける「持続的な購買ループ」を構築できます。本施策もこのループにうまく乗った事例です。
──「認知・トライアル獲得」にとどまらず、施策の効果や購買への波及まで可視化できる点は、従来型のサンプリングを超えた強みに見えます。
丸山:当社の配送は「常温・冷蔵・冷凍」の全3温度帯に対応しており、日用品や化粧品のパウチサンプルなど食品以外も幅広くご活用いただけます。テストマーケティングの場としても最適だと考えています。
山本:イオングループ共通IDとも連携しているため、ECでの結果を実店舗での購買行動まで追跡・分析するパッケージ展開の検討も進めています。「配って終わり」ではない、次の売上につながるマーケティング施策としてご活用いただければと思います。
お問い合わせ
イオンネクスト株式会社
EMail:ML_retailmedia@aeonpeople.biz URL:https://www.aeonnext.co.jp/

