「一瞬で過去になってしまう」トレンドにどう向き合うか ふたりのクリエイターが見つめるミーム・マーケティング

公開日:2025年6月30日

インターネット文化の一部として定着した「ミーム」。いまや企業マーケティングにおいても重要な武器となっている。今回は、サントリー「伊右衛門」や日清食品「カップヌードルシーフードヌードル」で“ミーム広告”を仕掛けた電通Creative KANSAI・森昭太氏とCHERRYの青木一真氏が対談。ネットミームを広告に取り入れる意義や効果、課題を現場のリアルな視点で語ってもらった。

なぜ今、「ミーム」が広告の武器になるのか

──今日は、広告に“ネットミーム”を取り入れたプロジェクトが印象的なおふたりにお越しいただきました。

青木:私が担当したのは、サントリー「伊右衛門」のリニューアルに伴うデジタルキャンペーンです。テレビCM一辺倒のコミュニケーションだけでは商品が売れにくくなってきている時代。消費者はデジタルデバイス中心の生活を送っていて、SNSが購買行動にも大きな影響を与えています。だからこそ、今回のコミュニケーションもSNSで自然に語られることを意識してスタートしました。

森:日清食品さんも、普段から話題になっているコンテンツやミームを用いて企画することが多い企業です。僕が担当したカップヌードルのシーフード味のキャンペーンもそのひとつなのですが、決して話題化を目的にミームを活用していると言うわけではありません。ターゲットに言いたいことをどう受け取りやすい形で届けるか?の答えのひとつとしてミームの活用があると考えられています。

青木:受け取りやすい形で届けるためのミーム活用、共感します。「伊右衛門」のキャンペーンでは、商品の「味が濃くなった」という特徴をどう伝えるかを考えたとき、「リアルに伝える」ことが一番いいと思ったんです。そこで、実際に他社商品と飲み比べてもらって、本音で話してもらう街頭インタビュー形式を採用しました。“嘘がない”という、ネット時代ならではの価値観に寄り添いたかったんです。

森:わかります。とはいえ、それだけではSNSで埋もれてしまいますよね。

青木:そうなんです。そこで、過去にネットでバズった「自己防衛おじさん」みたいな、街頭インタビュー出身の“ミームのレジェンド”たちに登場してもらいました。彼ら自身がミームとしての存在感を持っているので、広告に対して抵抗感がある層にも、自然と受け入れてもらえる仕掛けにしたいと考えました。

森:僕が担当したシーフードヌードルのプロモーションも、いくつかミーム候補を探して提案し...

この記事の続きを読むには定期購読にご登録ください

月額

1,000

円で約

3,000

記事が読み放題!

この記事をシェア

この記事が含まれる特集

ミーム・マーケティング戦略と実践

SNSを起点とする情報の流れはますます加速し、今日バズったものが明日には忘れ去られる時代に突入しています。生活者の関心は「今」に集中し、ブランドやプロモーションにおいても「トレンドに乗れるかどうか」が話題化の成否を左右するようにもなってきました。本特集では、ネットミームやSNSで生まれるトレンドを瞬時に捉え、巧みにプロモーションへと昇華させて話題を呼ぶ「ミーム・マーケティング」に注目。単なる“ノリ”ではなく、明確な意図を持って仕掛け、成果へとつなげている事例や、その裏側にある体制・判断・設計思想を深堀して紹介します。さらに、共感による拡散のメカニズム、炎上リスクへの備え、そして現場でトレンドと向き合うSNSの“中の人” たちのリアルな声を通じて、ミーム・マーケティングという手法の本質に迫ります。SNSとともに変化する生活者の感情や行動、そのスピードを武器にするのはチャンスか、リスクか─。販促・マーケティング担当者が“今”の空気を企画に取り込むためのヒントを探ります。

記事一覧

MEET US ON