キャラクターが果たす役割は、今や広告の枠を超え、企業と生活者をつなぐ重要な存在へと進化している。では、長く愛されるキャラクターにはどんな共通点があるのだろうか。本記事では、「Ponta」や「ナナナ」など数々の人気キャラクターを手がけてきた電通のアートディレクター・糸乘健太郎氏に、愛されるキャラクターのつくり方や、これからのキャラクター活用の可能性について語ってもらった。

私は2001年に電通へ入社し、アートディレクターとして20年以上広告の世界に携わってきました。もともとは特定のジャンルにこだわらず、幅広くアートディレクションを手がけていましたが、近年は企業キャラクターの新規開発や、既存キャラクターの活用に関する相談を中心として活動しています。
広告の仕事を始めた当初は、キャラクターをつくりつつも、当時はその広告効果の大きさに気づくことはありませんでした。しかし時代が進み、スマートフォンの登場をはじめとするデジタル技術の進化により、メディアのあり方そのものが大きく変化したことは周知の事実です。広告業界もまた、これまでの“一方的に届ける表現”から、“ユーザー体験を設計する”という方向へ、大きな転換期を迎えることとなりました。
広告の手法は、単発的な表現だけでなく、テクノロジーのような新しい体験を掛け合わせた表現といった広がりのあるものへと移り、さらには「デュアルファネル」のように、認知から購買・継続利用に至るまでの長期的な顧客体験全体をデザインする必要性も高まっています。
こうした業界の変化の中で、私自身も既存メディアのクリエーティブを担当する部署から電通デジタルへの出向を経て、今ではカスタマーエクスペリエンス・クリエーティブ・センターという顧客体験を中心に全ての設計を考える部署に異動するなど、広告業界の変化とともに自身の居場所も変化しています。
そのような変化の中で、昔から継続的に携わっていた「キャラクター」の存在価値を再定義するようになりました。広告表現のひとつとして捉えられがちなキャラクターですが、実は今の時代における新しいコミュニケーションに最も適した手法なのではないかと感じるようになりました。そこで本記事では、これまでの経験を通じて見えてきた、これからのキャラクター活用のあり方、そして“愛され続けるキャラクター”について考えていきたいと思います。
土台のつくり方から違う!長く愛される企業キャラクター
私がこれまで手がけたキャラクターの中でも共通ポイントサービス「Ponta」は誕生から15年、テレビ東京の「ナナナ」は12年にわたり、企業キャラクターとして長く活用されています。では、企業キャラクターが“長く愛され続ける”ためには、何が必要なのでしょうか。
まず大切なのは、キャラクターにしっかりとしたコンセプトが落とし...