生活様式が大きく変わる中、企業は時代の変化に合わせた、新しい取り組みが当たり前に。しかし、前例のないことはリスクが大きく社内でも反対されやすい。では、どうすれば前例のない企画を通し、実現できるのだろうか。

ビジネスが競争である以上、常に新しいことを考えていなくてはなりません。競争優位にある企業はその基盤をより強くして他社の追随を許さないために。競争で後塵を拝している企業はその競争の秩序をひっくり返すために。特に現在のようにコロナ禍の環境では、今まで当たり前にやっていたことができなくなり、新たなことに取り組まざるを得ない場面も多々あると思います。
これまでマーケティング、商品企画の立場で仕事をしてきて、現在はコンサルティングや企業研修の講師を務めている私も、ずっとそのことを考えているといっても過言ではありません。
ただ、一方で前例のないこと(新しいこと)は反対されます。間違いなく反対する勢力がいます。その気持ちもわからなくもないですね。なぜなら前例のないことにはリスクがたくさんあります。否定しようと思えばいくらでも否定できます。
そこで大事なことは、前例のないことは他の通常の仕事とは異なるプロセスで進めなくてはならない、という点を認識しておくことです。物事に「絶対」はありませんので、そのプロセスで進めれば100%うまくいくわけではありませんが、少なくとも無策で臨むよりは、はるかに成功確率はあがります。本稿では私の経験談も交えながら、そのプロセスを皆さまと一緒に追いかけてみたいと思います。
「変革」というキーワードで有名なジョン・P・コッター先生の著書『カモメになったペンギン』でもいわれていることですが、最初に必要なのは最低限の規模でよいので同志を募ってチームにすることです。私の感覚では3、4名で十分です。できれば同じ組織の中だけではなく、異なる組織のメンバーも含めての3、4名です。このメンバーで次の項目以降の取り組みをスタートさせます。
企画の際に押さえておくべき要素
前例がない取り組みでは、いきなり結論(すなわち企画内容そのもの)から入ってしまってはいけません。通常、ビジネスでは「結論から!」といわれますが、それは平時のこと。有事の際にはそれは当てはまりません。なぜなら相手がびっくりするからです。人はびっくりしたり、不安に感じたりするとその感情が怒りに結びついてしまいます。するとこの段階で理屈よりも感情での拒絶になってしまうので非常に危険です。
ではその前に何が必要か?というと「共感」です。共感とは文字通り同じ感情を共にするということですが、より具体的に言えば、「相手の気にしていそうなこと、考えていそうなことを代弁すること」です。企画内容は最終的には会社や組織をよくするものですが、この段階では、まだその企画と周囲の感覚には距離がありすぎます。
そこで必要なのは、少なくとも会社や組織において、相手も思っていそうなことを想定してそれを代弁すること。少しずるい言い方をすれば、企画が目指している直接的な効果はそれでなくとも、相手が気にしていることを優先してしまうイメージです。
例えば、私がメーカーの商品企画をしていたころ...