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広がるオンライン接客 「非接触」の販売促進手法

モバイルオーダーが米国で急拡大 マーケティングツールとしても進化

  • 後藤文俊(流通コンサルタント)

外食産業でも、非接触でメニューを注文できるモバイルオーダーが注目を集めている。スターバックスやチックフィレなど、アメリカの大手チェーンで導入されている先進事例をもとに、海外動向を在米35年のコンサルタントである筆者がレポートする。

47州に約2500店を展開するチキン・サンドウィッチ・チェーン「チックフィレ」。モバイルオーダーしたメニューをテーブルに運ぶサービスを行っている。アプリを通じた獲得ポイントに応じた会員制度もある。

コロナ禍により外食チェーンで注目を集めているのがモバイルオーダーだ。モバイルオーダーはレジ待ち行列を緩和し、注文の聞き取りミスや勘違いによるヒューマンエラーを回避できることでクレームが減り、顧客ロイヤルティが高まる。スタッフもより調理に集中できることで、店内オペレーションの合理化も図れるメリットがある。

ファストフード店などでは注文時、レジ係とお客は向き合うことになる。仮に感染したお客が来店すれば店舗スタッフも感染のリスクにさらされるのだ。注文時にお客が咳やくしゃみをすることもある。飛沫感染のリスクにさらされるだけでなく、そういった顧客から現金を受け取れば接触感染する可能性もあるのだ。

一方で、アプリを介しての注文となるモバイルオーダーではスタッフが感染リスクにさらされることはない。モバイルで注文を受けた店舗では、ネット注文された料理をピックアップ窓口や専用テーブルなどに出すだけだ。お客との物理的な接点が最少となり、接触感染のリスクも低くなる。

モバイルから注文することで客側にとってもレジ待ち行列に並んで自分の身を感染リスクにさらすことはない。自分の端末であるスマートフォンから注文するため、他の客が触った端末からの接触感染もない。お客にとっても安心して注文できることになるのだ。

約2割がモバイルアプリからの注文

モバイルオーダーはスターバックスやチックフィレのほか、マクドナルドなどのファストフードチェーンや3大宅配ピザチェーン(ドミノ・ピザ、ピザハット、パパジョンズ)大手などといった外食チェーンが導入している。またディズニーリゾートやユニバーサル・スタジオなどのテーマパーク内のレストランに拡大している。

大手映画館チェーンの売店にも導入され、最近ではNBA(プロバスケットボールリーグ)、MLB(メジャーリーグベースボール)、MLS(メジャーリーグサッカー)などのスポーツ観戦のアリーナやスタジアムでも続々とスマートフォンによる事前注文を採用している。ニューヨーク州など7州に101店舗を展開する食品スーパーのウェグマンズもデリセクションでのモバイルオーダーを拡大している。

先に全店に導入を済ませている外食チェーンでは売上の一部がモバイルオーダー経由になっている。例えばスターバックスでは(パンデミック直前で)すでに17%がモバイルからの注文となり、チックフィレも約20%がモバイルアプリからの注文だ。

パンデミック以前、日本ではアメリカでのモバイルオーダーの急拡大の背景を「レジ待ち時間の短縮」だと指摘する人が多かった。しかし最大のメリットは客単価の上昇なのだ。これはモバイルオーダーを使ってみるまでは分からない。なぜなら注文のボトルネックが明確になるからだ。

メニューのカスタマイズで客単価アップ

注文のボトルネックとは他者を慮ることを意味する。他者に迷惑になると、細かくメニューをカスタマイズした注文がこれまでできなかった。しかし、モバイルオーダーでボトルネックを意識することなくカスタマイズ注文が可能となる。つまり店側は、トッピングやサイドメニューなどの有料のアドオン・オプションを増やしておくだけで客単価が上がることを意味するのだ。しかも注文履歴が残るため、細かくカスタマイズしたものでも簡単に再び注文できることになる。

客単価を上げるのは簡単だ。ラーメンの場合、チャーシュー1枚から追加オーダーできるように細かくしておけばいい。これまでのように単に「大盛り」と表示するのではなく、ご飯や麺をグラム単位でカスタマイズできるようにすればいいのだ。

ハンバーガーチェーンなどでは、メニューによってアメリカンチーズをコルビージャックチーズなどに無料で変更でき、ピクルス(無料)やレタス(15セント)、トマト(15セント)などの追加トッピングも可能となっている。フライドポテトには、BBQソースやハニーマスタードなど6つのソースから最大3つ選べるようになっており、塩抜きも可能だ。コーラやアイスティー、レモネードなどの飲み物も「氷なし」「氷少なめ」「氷多め」まで細かく選択できるようになっている。

細かいけれど無料カスタマイズで顧客はお店に対して「信頼」や「愛着」も湧いてくるというものだ。

注文すればするほど顧客ロイヤルティ向上

47州に約2500店を展開するチキン・サンドウィッチ・チェーンのチックフィレのモバイルオーダーを応用した事例が面白い。チックフィレではモバイルオーダーしたメニューをテーブルに運ぶサービスを行っているのだ。

モバイルオーダーを利用した「ダイン・イン・モバイル・オーダリング(Dine-In Mobile Ordering)」は専用アプリの「チックフィレ・ワン(Chick-fil-A One)」からメニューを事前注文し、店舗内のテーブルにある番号でテーブルサービスを行う。

注文の仕方はアプリを起動後、モバイルオーダーを行い受け取りオプションにある「ダイン・イン(dine-in)」を選択する。店に到着したらスマートフォンでテーブルにある番号札を軽くタッチする。専用アプリがテーブル番号を認識して、事前注文した料理が運ばれてくる仕組みだ。

同サービスは2018年、フロリダ州タンパやワシントン州シアトルなど5都市にあるチックフィレ約80店舗でイートインの名称でテスト展開されており、テーブル番号をマニュアル入力する必要があった。ダイン・インではテーブル番号をスマホでタップするだけでよく、入力間違いがなくなり、ストレスフリーに改善されたことになる。

モバイルオーダーの注文でテーブルまで運んでくれるサービスは...

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コロナ禍でものの売り方や、店と人との関係性や距離の取り方が変化している今。Eコマースやオンラインでのコミュニケーション手段が広がり、店頭でも従来の人的接客に代わる販促のためのテクノロジーを本格的に追求する動きがでています。今後求められる "非接触(タッチレス)"を前提としたサービス変革とともに、顧客満足度も高めていくための戦略に迫ります。

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