昨今はデータを活用した実利性や効率性を追求した販促施策が主流だが、当然ながらデータだけでは捉えきれない側面も多くある。空間をメディアとして捉え、コミュニケーションをデザインする谷川じゅんじ氏に、空間という観点から店舗における販促活動について聞いた。

スペースコンポーザー/JTQ代表 谷川じゅんじ(たにがわ・じゅんじ)氏
2002年、空間クリエイティブカンパニー・JTQを設立。“空間をメディアにしたメッセージの伝達”をテーマに、イベント、インスタレーション、商空間開発などを手掛ける。独自の空間開発メソッド「スペースコンポーズ」を提唱、多方面から注目を集めている。
www.jtq.jp
欲求が顕在化していないときに実空間の店舗が機能する
─谷川さんは空間のデザインの観点から、昨今の販促を取り巻く状況をどのように見ていますか。
まず前提の話ですが、現代はさまざまな価値の紐付き方が複雑になってきていますよね。また次々に新しいサービスが台頭して浸透していけば、当然売り方も大きく変わります。コミュニケーションをとってみても、ソーシャルメディアが台頭して、とくに若い世代ではいまやソーシャルメディアが主たるコミュニケーション手段になっています。そんな中でお店側は「自分たちは、一体何に力を注げば、本当に顧客とつながることができるのか」が、これまで以上にわかりにくくなっているのが現実です。
例えば「物を買う」ということにおいて、買う物があらかじめ決まっていれば、いまの時代はネットでどこでも自由に買うことができます。東京でアクセスして目的の品を見つける。そのサイトが、地方にあるお店だったとしても、その商品が欲しいと思えば、ポチっとクリックすれば難なく買うことができる。そして翌日から数日あれば国内ならまず間違いなくモノは手に入る。もしかすると即日届くかもしれないし、送料すらかからないこともあります。
さらに昨今では海外商品でさえ、クリックひとつで買うことができる時代です。最近は …