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顧客に喜ばれるデータ活用の要点

6割予測できる、残りは不透明だ だからそこに答えを出そう

データ活用で成果を収めるには、どのようなことが欠かせないのか。企業の規模、業態の違いによらない、誰でもインストールできる「考え方」を聞く。

(写真左から)花王コンシューマープロダクツ事業部門キュレル事業部の廣澤祐氏、花王コンシューマーリレーション開発部データサイエンス室の佐藤満紀室長。

集計から解析へ データ活用の成果とは

佐藤満紀氏:かつての「データ活用」の実態は「データ集計」でした。現在のデータへのアクセスのしやすさ、容易に同じようなデータを扱えるようになったことを考えると、集計だけで競うのは困難です。データだけでは武器にならない、情報にならない。情報に変えるプロセス、考え方、手法の洗練──集計から解析へ移行しようとしている。これが、各社の現状ではないでしょうか。

廣澤祐氏:佐藤がいまお話ししたのは、まさにこの20年間ほどの、マーケティングにおけるデータの価値の変化に沿うものではないかと思います。90年代以降、扱える情報が増え、2000年代に入ると携帯電話やスマートフォンが普及し、得られるデータの総量と種類が増えました。獲得自体も容易になってきている。

当時は、持っている情報の内容、多寡が競争力であり、だからこそ、定点的に情報を収集できる調査会社の地位が現在よりも高かった。時が経つにつれ、データそのものの価値も相対的に下がってきている。この転換点をどう切り抜けるか。

この問いに素直に答えを出すなら、データをいかに読み替えるか、解釈できるか、ということになります。メーカーで言えば、データから消費者の課題やニーズを読み取り、商品開発やコミュニケーションに生かす、ということになります。

ここでさらに一つの疑問が出てきます。消費者が持つ実際の欲望をどこまでデータで証明できるのか。収集したデータの解析結果に基づいて、「仮説を立てましょう」なのか、「商談に臨みましょう」なのか。何をするのか、何を成果として規定するのか。具体化せねばなりません。

曖昧なままにしていると、期待だけが高まってしまいますし、ひいてはかかわるデータサイエンティストが苦しむことにもなります。マーケティングに携わる各種の職能を持った人々の認識が合っていなければ、仕事の質も下がってしまいます。

分析者の同質性と多様性 定性と定量に橋をかける

佐藤氏:データ分析の目的の一つが「顧客理解」です。とりわけ、データから"インサイト"を得るとか、導くといった言い方をすることがあろうかと思いますが、個人的にはデータを分析しても"インサイト"そのものは出てこないと考えています。

私は、"インサイト"とは「本質的な欲求」だと思っています。また商品ごとに1種類ではありません。ビジネスをしている以上、ある程度の規模としてとらえたいと考えていますが、データ解析だけではそれらを理解することは困難です。

ではどうやって「これがヒントだ」と、チームなり社内なりで形をなすのか。当社で重視しているのは、一人で解析結果を見て、判断を下すのではなく、各ステークホルダーや、多くの経験を踏んできた人たちが対話を通じ、解析結果を見ることです。

そして、その結果の中身について皆で議論する。事業部門や研究部門が置かれている状況、制約を踏まえて議論し、分析結果を戦略や戦術へ落とし込んでいく。そういったコラボレーションを進行させています。

廣澤氏:佐藤らデータサイエンティストと、データの分析結果、特に定量的な側面について対話するのはとても有益なことです。元々私はよく佐藤のデスクに行って質問をしていました。これがデータからどこまで顧客理解を深めるかについて、役に立っているのではないかと思います。

しかし、定量だけでなく、定性的な側面についても、データサイエンティストとの議論からは得られるものが大きい。実際、先日グループインタビューを実施した時も、佐藤とは有意水準がどうこうだけでなく、こんな人がいた、こんなことを語っていた、Web上ではユーザーと思しき人々がこのような交流をしている──など、そこからの発見についてよく話し合いました。

私は元々の出身がデジタルマーケティングの分野だったので、ソーシャルリスニングも一定程度重視しています。ソーシャルメディアでの発話は、投稿というアクティブな姿勢を持っているという前提を忘れさえしなければ有用です。

ソーシャルリスニングに限らずですが、顧客のことを知るにはいくつかの方法があります...

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顧客に喜ばれるデータ活用の要点

「データ活用」─とはいつごろから世に登場した言葉だろうか。たとえば「データ分析」という語句であれば、1970年代にも使われていることは、調べれば容易にわかる。しかし「データ活用」は管見の限り、1990年代も後半に入ってから登場しているようだ。データは、「分析」するだけでなく、「活用」を前提とするものになった。

ともかくも「データ活用」が人口に膾炙するようになって、二十数年が経つ。では現在の私たちは、どこまでデータを活用できているのだろうか。見込み顧客にEメールやダイレクトメールを送ってみたり、Webの閲覧履歴を基に、興味を引きそうなディスプレー広告を見せてみたり。あるいは購入した商品などの情報に基づき、割引クーポンをレジで発行するというのも該当する。こうしたプロモーションの精度を高めるだけが「データ活用」なのだろうか。

近年では、「ビッグデータ」や「データサイエンティスト」という言葉が、経済関連のメディアの見出しに踊った。やや食傷気味という向きも少なくはないのではないだろうか。また最近では「情報銀行」や、「信用スコア」といった言葉が、その地位に付いているようだ。栄耀栄華をほしいままにせんとばかりの「データ活用」は進化のスピードが速い。手をこまねいていると時代に置き去りにされそうな不安もよぎる。

しかし、実のところ、顧客から誕生日を教えてもらい、それを覚えておいて、ちょっとしたギフトを贈り、お祝いのひとことをかけるのであっても、立派な「データ活用」のはずだ。誕生日は個人情報であり、それを活用しているにほかならないからだ。むしろ、ここにこそ、データ活用の本質、要点があるのではないか。

話題ばかりが先行しがちな「データ活用」だが、それを手段として、すべきこととは一体なんであるか。各社のキーパーソンに話を聞いた。

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