ディノス・セシールで「サステナブルなECビジネスを構築する」というミッションを掲げる石川森生氏。「顧客を中心に考えることが、改めてダイレクトマーケティングに注力する理由となる」と語る。顧客のためになる、情報提供のあり方をはじめ、一問一答形式でその思考を紹介する。

購入した商品に似たアイテムを着こなしている写真を抽出し、パーソナライズした小冊子。カタログに対するロイヤルティが上がりづらいWebの顧客層のレスポンスが約10%アップする成果を収めた。
──ディノス・セシールの競争力の源泉となっている知識やスキルとは何ですか。
石川森生氏:当社の競争力の源泉は、自社オリジナルの商品にしろ、仕入れによる他社製品にしろ、マーチャンダイジング担当者の商品に対する目利きとこだわりです。
また、それらをより強固にするものとして、厳しい品質管理基準を設けており、お客さまにとって安心、安全な商品をお届けできるように努めています。
──その知識やスキルは、商品やサービス、各種のコミュニケーションツールを介し、どのようにして、発揮されていますか。
石川氏:当社の商品には、その品質やこだわりのポイントをしっかりと説明してお伝えすることが必要なものが多くあります。もちろんカタログに掲載するための高解像度の写真やコピーワークも、そのような手段の一つです。
最近ではカタログ誌面の制約をカバーするために、Webサイトで、よりくわしい情報を写真や動画などで補足するようにしています。
加えて、当社目線の情報だけではなく、他社メディアの記者さんや、いわゆる"インフルエンサー"と言われるような、生活に強いこだわりを持った、一般消費者に近い立場の方に商品の寸評をお願いし、コンテンツを制作しています。
そのほか、多くのコンテンツで商品の魅力を訴求することに努めており、Webサイトの検索やカテゴリーから探す導線よりも、コンテンツ閲覧経由の売上比率が高くなってきています。
──ディノス・セシールで扱う商品、提供しているサービス、各種コミュニケーションツールを利用し、その価値を最大限発揮するには、顧客にどのような知識・スキルが必要でしょうか。また、それを適宜、伝え、浸透させるために、どのようなことを実施しておられますか。
石川氏:消費行動における購入の手前の段階に、受動的動機づけと能動的探索というフェーズがあります。
ECは能動的探索の中でも、購入直前の合理的な比較検討時に、その存在価値を最も高くするものです。一方で、現在のWebのルールの中で、その多くは大手モール企業が提供する情報に偏ってしまう傾向があります。
消費者が、より良い商品を発見し、後悔のない商品体験をするためにも有益な情報を受動的に得られる環境が必要です。そのひとつは、ソーシャルメディアのような近しいネットワークから得られる二次情報でした。しかし昨今では、広告的な内容も多く見受けられるようになっています。
こうした中で、商品の目利き機能を持つ信頼の置けるリテーラーからの三次情報的な価値は見直されつつあります。カタログもその一つかもしれません。
──カタログの「価値」についてです。コミュニケーションツールは商品と同様に、コンテンツを介して、貴社が持つ知見・スキルの効用を提案できるものですが、「コンテンツ市場」という見方だと、ほかに視線を集めるコンテンツが多く、かつてほどには優位性を保てていないのではないかと思われます。カタログを介して、貴社が提案している価値は何でしょうか。
石川氏:前問の通り、受動的動機づけのための、フェアで正確な商品提案だと考えています …