近年、小売企業が他社の小売を子会社化したり、社内の編成を変更したりと、小売業界全体での経営統合や組織再編が相次いでいる。このような状況において、小売に対して提案を行うメーカーの営業担当者にはどのような影響があるのか。流通科学大学 商学部経営学科教授の白鳥和生氏が解説する。
2025年、小売業界はまさに“地殻変動”の最中にあります。トライアルホールディングスによる西友の買収、セブン&アイ・ホールディングスによる「非コンビニ事業」の切り離しと売却、イオンの中四国や首都圏でのグループ再編、さらにはロピア(OICグループ)やオーケーなどのエリア拡大、クスリのアオキホールディングスによる中小スーパーの相次ぐ買収──こうした再編の動きは、全国に波及しており、従来の商圏や業態の枠を超えた「新しい小売地図」が描かれつつあります。
こうした環境下で、メーカー営業や販売促進担当者は何を考え、どのように動くべきでしょうか。再編が進む今こそ、メーカーの小売担当者としての役割を問い直す時期にあると考えられます。
小売再編の背景にある構造的変化と5つの軸
相次いで進むM&A(合併・買収)や組織再編の背景には、人口減少と少子高齢化、デジタル投資の重圧という外部的な要因があります。加えて、消費者の節約志向が強まる中で、プライベートブランド(PB)商品への支持が高まり、小売業は商品調達力と販促力の強化を急いでいるのです。
こうした状況に対応するため、経済の規模とカテゴリ強化の両立を目指した「スケーラブルな再編」が進められています。特に注目したいのが、以下の5つの再編軸です。
①商品力の強化(PB商品の拡充、仕入れ力の強化)
②デジタル対応(物流・アプリ・AIによる最適化)
③エリア補完(商勢圏の拡大、リージョナルシフト)
④市場変化への適応(O...