SNSや生成AIを通じて商品と出会い、購買意欲を高める生活者が増えている。一方、企業側でSNS、EC、生成AIへの対応が分断されていれば、せっかく生まれた需要を売上につなげることは難しい。そこでHakuhodo DYONEが強化するのは、戦略から販売、商品企画、在庫管理までを一つの流れで捉える「エンドツーエンド」の支援体制だ。全自動ドリップコーヒーマシン「xBloom」の日本市場展開から、その実践に迫る。
商品発見から購入まで時間が長いほど、購買意欲は薄れる
オンライン上の購買をめぐる生活者の行動が変わっている。商品名を自ら検索し、比較・検討するだけでなく、SNSの投稿や生成AIの回答から商品を知り、購入を検討する動きがますます広がってきた。
Hakuhodo DY ONEでは、このような、生活者がSNSや生成AIを通じて商品と偶然出会い、購買意欲を高めていく「発見型」の購買を「ディスカバリーコマース」と捉えている。SNS・インフルエンサーマーケティングとコマースマーケティング領域を統括する二木純氏も、SNSや生成AIが普及したことによって購買行動が変化しているのは、調査からもわかってきたという。
「当社の調査によると、SNSの投稿を見ると買いたい気持ちが高まると答えた人は、全世代で37.2%、10代、20代では約6割に上りました。生成AIを購買判断に活用する人も増えており、商品を買う前の行動そのものが変わってきています」(二木氏)。
一方、商品との接点や発見の機会が増えれば、そのまま売上につながるわけではないと二木氏は続ける。発見型の購買では、「欲しい」と思った瞬間から購入までの時間が、これまで以上に重要になるという。
例えば、購入先が分からない。会員登録や住所入力に手間がかかるなどの障壁が重なり、発見から購入までの時間が長くなればなるほど、せっかく高まった購買意欲は薄れていく。
「SNSで火がついた需要を、すぐにECで受け止められなければ、販売機会を逃してしまいます。生活者が欲しいと思った瞬間に、なるべく早く購入へ移れる導線をどう実装するかが重要です」(二木氏)。
しかし、企業側の体制を見ると、SNSはマーケティング部門、ECは事業部門、生成AIへの対応はデジタル部門と、担当が分かれているケースも多い。外部の支援会社も、広告運用、EC支援、制作、物流と領域ごとに異なる。
その結果、SNSで反響が広がっても、EC側で在庫を確保できない。広告で伝えている価値と、商品ページの説明が一致しない。販売が急増しても、配送体制が追い付かない。それぞれの施策を個別に最適化することで、かえって販売機会を失う事態が生じてしまうのだ。
「生活者にとって、SNS、EC、生成AIは分断された接点ではありません。企業側も、商品の発見から購入までを一つの流れとして設計する必要があります」(二木氏)。
Hakuhodo DY ONE
ECマーケティング本部 執行役員
SNS&コマースユニット長
二木 純氏
10万円の価値をどう伝えたか 「エンドツーエンド」の支援体制
こうした分断を解消するため、Hakuhodo DY ONEが強化しているのが「エンドツーエンド」の支援体制だ。戦略策定からSNS、コマース、生成AIへの対応までを一貫して支援する。案件によっては、商品企画や在庫管理にも踏み込み、グループ会社と連携した顧客対応や物流体制の構築まで視野に入れる。
その実践例が、全自動ドリップコーヒーマシン「xBloom」の日本市場展開だ。
xBloomは、米国TBDx社が開発したコーヒーマシンだ。海外ではすでに複数の国で販売されていたが、日本ではブランド認知が十分ではなく、価格も約10万円。販売開始後、オフラインを中心に販路を広げたものの、売上は伸び悩んでいた。
このような課題のもと、HakuhodoDY ONEは2026年3月、Amazonの商品ページ改善や広告運用から支援を開始。だが、一定の成果は出たものの、Amazon内の施策だけでなく、日本市場全体を見据えた設計も必要だと見えてきたという。
この案件を担当するのが、SNSとコマースを横断する組織を率いる星拓磨氏だ。
「2026年7月時点の市場環境を見たところ、Amazonではコーヒーマシンが月間約2万3000台売れていますが、8万円を超える商品は約500台にとどまっていました。仮にその市場で大きなシェアを取っても、売上の上限が見えてしまう。Amazonの施策に加えて、日本市場全体を視野に入れることで、ブランドをさらに成長させられると判断しました」(星氏)。
高価格帯の商品は、機能の高さを説明するだけでは購入につながりにくい。「本当に使いこなせるのか」「買って後悔しないか」「購入後のサポートは十分か」といった不安が、購買のブレーキになるためだ。
そこでHakuhodo DY ONEは、Amazon内の販売施策にとどまらず、日本市場全体でxBloomの売上をどう伸ばすかを考える体制へと支援を拡大。xBloomの価値を、""高機能コーヒーマシン""から「各地の実力派コーヒー店の味を、自宅で再現できる""プラットフォーム""」へと捉え直しを図ったという。
「チャネルの問題ではなく、その機能で生活者がどんな体験を得られるかを示すことが大切でした。全国のロースターの味を自宅で楽しめるという価値であれば、コーヒーに強くこだわる人だけでなく、カフェが好きな人にも対象を広げられますから」(星氏)。
Hakuhodo DY ONE
ECマーケティング本部 本部長代理 兼
SNS&コマース戦略室 室長
星 拓磨氏
EC支援からブランド成長へ さらに拡大するサポートの範囲
新たなコミュニケーション方針のもと、Hakuhodo DY ONEは生成AIを活用して日本向けのxBloomブランド動画を制作。ShopifyによるブランドサイトやTikTok Shopの構築にも着手した。「現在はECの運用を代行する立場を超えて、xBloomのEC事業部の一員のような立場で自社の事業として捉えながらプロジェクトを進めています。営業、商品企画、コンテンツ制作、EC運営を別々に動かすのではなく、ひとつのチームで並行して進める。これにより、企画から実行までの速度を高めています」(星氏)。
支援開始後の売上は、開始前の同期間と比べて約1.6倍に伸長した。初動ではAmazonの商品ページ改善や広告運用が売上を押し上げた一方、2026年5月以降は、日本市場全体でブランドを成長させるため、支援領域を自社ECやSNS、商品企画へと広げている。
「エンドツーエンドの支援を本格的に始めてからは、まだ約2カ月です。数カ月後には、AIも市場も、いま以上に変化しているかもしれません。だからこそ、正解が固まるのを待つのではなく、ブランドと同じテーブルにつき、仮説を立てて素早く実行することが重要です」(星氏)。
個別施策の代行にとどまらず、事業全体を共に動かすこと。それが、Hakuhodo DY ONEが目指す次世代のEC支援だ。
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株式会社Hakuhodo DY ONE

