「検索した」「閲覧した」といった行動から興味関心を推測し、広告を届ける。そんなデジタル広告の常識が変わろうとしている。起点となるのは、「実際に何を買ったか」という購買データだ。さらに、そのデータから「次に欲しくなるもの」まで予測し、検索される前にニーズを先回りして広告を配信する。こうした新たな広告のあり方として、オズビジョンが仕掛けるのが「コマースメディア」だ。この「コマースメディア」は広告・マーケティングのあり方をどう変えるのか。
いつまで“検索”にお金を払う? 広告予算を見直す時が来た
デジタルマーケティングの現場において、従来の施策が成果に繋がりにくくなっている。3rd Party Cookieをめぐる規制・制約の強化や、検索結果画面でユーザーの疑問が完結するゼロクリック化に伴い、SEOや運用型広告の獲得効率はますます低くなっている状況だ。
さらに、閲覧数やクリック数に応じて費用が発生するインプレッション課金やクリック課金は、実際の売上や成約へどの程度貢献したかが確認しづらい課題がある。施策ごとに費用対効果を厳しく見る今、これまでのやり方では成果が生まれづらくなってきた。
「従来の広告手法では、示唆や仮説は得られても、実際の売上や申し込みに対する費用対効果を正確に管理することが困難でした。そんな中で成果を重視する企業が求めているのは、閲覧や検索などの興味関心の推測ではなく、商品が買われた、あるいはサービスが成約したという実購買・実成約データに基づく広告アプローチだと思います。今まで通り、“検索キーワード”にお金を払い続けてよいのか。各社、広告予算を見直す段階に入っているのではないでしょうか」。
こう話すのは、オズビジョン 代表取締役社長の鈴木良氏だ。投じた広告予算に対して、成果が見えにくく費用対効果の管理が困難である従来型の手法に、根本的な限界を感じていたという。こうした、現在の広告・マーケティング課題を解決する手法として、オズビジョンが取り組むのが「コマースメディア」だ。
オズビジョン 代表取締役社長 鈴木 良氏
対象は小売から、商取引へ 「コマースメディア」とは何か
とはいえ、実購買データをもとにした広告手法としては、小売企業が自社の購買データや売り場を活用する「リテールメディア」が注目されることが多い。オズビジョンが取り組む「コマースメディア」と「リテールメディア」は、どう違うのか。
「コマースメディアは、オンライン・オフラインを問わず、あらゆる商取引の接点やデータを活用するメディアです。リテールメディアは、コマースメディアの一部とイメージするとわかりやすいと思います。リテールメディアが主に特定の小売企業やアプリ、ECサイトでの物販購買を対象とするのに対し、コマースメディアはオンラインとオフライン、物販と無形商材を問わず、消費者のあらゆる購買取引やサービス利用全般が対象。特定の企業や店舗、商材に限られず、広範な商取引データを扱う点が特徴です」(鈴木氏)。
図1 リテールメディアとコマースメディアの違い
「誰が、いつ、何を買ったか」 その“事実”を広告に生かす
では、オズビジョンが展開するコマースメディアとは具体的にどのようなメディアなのか。同社では、主力であるポイントモール「ハピタス」をはじめ、リユースアプリや資産運用マッチングといった複数のサービス群(プロダクト群)を一体で運用。そこで生み出される「会員基盤」と「実購買・実成約データ」を活用した独自の広告プラットフォーム全体を「コマースメディア」と位置付けている。
オズビジョンが「コマースメディア」を展開できる背景には、同社が運営する「ハピタス」をはじめとした679万人*の会員基盤と、年間1,500億円*規模の流通総額の存在がある。とくに会員の約6割は30~40代の購買力が高い層が占め、年間数百万~数千万円を決済するECヘビーユーザーが密集しているのが特徴だ。現在では買い物や旅行予約に加え、金融、リフォーム、フランチャイズ開業などのライフイベント領域まで扱うサービスを拡大している。(*2026年3月末時点)
「当社のコマースメディアを支えるのは、この会員基盤と取り扱いカテゴリを限定しない幅広さです。そのおかげで、『誰が、いつ、何を買い、どのサービスを成約したか』という一連の実購買・実成約データを直接所有できています」(鈴木氏)。
同社のコマースメディアは、出店料や手数料がかさむ従来のECモール出店とは一線を画す構造を持つ。「ハピタス」をはじめとするプロダクト群にバナーやオファーを掲載し、自社ECサイトや自社ページへ直接ユーザーを引き込むオープンな「送客モデル」だ。固定の出店料は不要で、購買や成約に至った時のみ費用が発生する完全成果報酬型のため、広告費の無駄打ちが発生せず、費用対効果をコントロールできる。
「顧客の決済や会員登録は自社サイトで行われるため、顧客データ(1st Partyデータ)は自社の資産として蓄積可能です。この直接送客に、実購買データによる高精度なターゲティングを掛け合わせて、無駄のない広告運用を実現します」(鈴木氏)。
買った事実で次の購買を予測 成約率は通常比44倍
鈴木氏が言う「無駄のない広告運用」とは、無駄打ちを減らすことにとどまらない。実購買データで成約しやすい層を見極めたうえで、過去の購買軌跡の相関から次のニーズの発生を予測し、広告を先回りで配信することに核がある。
まず、配信先の精度だ。同社の資産運用相談サービス「ウェルスコーチ」での検証では、不動産投資の成約データに基づき、プロの資産運用相談サービスの広告を配信した。その結果、未設定時と比べてCVR(成約率)が約44倍という成果を記録した。
さらに購買データは、「次に何が売れるか」を示すシグナルにもなる。例えば、旅行を予約した人は、そうでない人に比べて、その後30日以内にレンタカーを予約する割合が約5倍高かったという。こうした実データをもとに、旅行予約者へレンタカー予約の広告を先回りで届けるイメージだ。
「企業にとっては、『完全成果報酬によるROIの徹底管理』『潜在層・優良層への高精度な先回りアプローチ』『モール依存を脱した自社顧客データの保持』というマーケティング価値が得られる仕組みです」(鈴木氏)。
同社は今後、M&A戦略を通じてライフイベント領域のサービスを積極的にグループ化し、会員基盤を接続することで送客力をさらに高めていく方針だという。
「これからの時代、ユーザーが自ら検索して比較検討する手間はなくなっていきます。当社は購買データとAIを掛け合わせ、生活者にとって最もお得な選択肢を先回りして提案・代行する『コマースエージェント』へと進化していきます」(鈴木氏)。
図2 例:過去の実購買・実成約データが導き出す「次の需要」へ先回りで広告配信
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担当:前田(マエダ)

