世界の発想にヒントあり 海外アワードフィルム部門大研究

公開日:2026年8月31日

  • 石井義樹、木下マイヤ、上野千蔵

AIが浸透した現在、世界のアワードでは、どんな映像が評価されているのだろうか。2026年の海外アワードのフィルム関連部門において審査を担当した3人に審査時の視点を振り返りながら、一押しの事例を挙げてもらった。

石井義樹
キラメキ代表取締役社長/エグゼクティブプロデューサー
Cannes Lions 2026
Film Craft部門 ショートリスト審査員

「AI Craft」vs「アナログCraft」

今年のカンヌの審査ではサブカテゴリとして初めて登場した「AI Craft」をどう扱うのか、という点が議論になった。審査委員長は今年の審査の結果が来年以降を定義付けるものになる、と言い、審査の途中でも生成AIでつくられた動画や音楽をどう評価して良いのか、本当に難しいという審査員が多くいた。

今回(2026年)のFilm Craft部門は「AI Craft」vs「アナログCraft」という図式だとすれば、アナログのクラフト力の圧勝だろう。その象徴がグランプリを受賞したCoinbaseの「Your Way Out」だった。ただ生成AIの使用そのものが否定されたわけではなく、AIはツールとしてはかなり進歩しているが、それを使う人間がまだまだカンヌクオリティで使いこなせていない段階だ。コピーや模倣が溢れる現代において、「何が本当にリアルなのか?」という皮肉とユーモアの効いた問いかけが、このブランドの“鑑定された本物しか扱わない”というメッセージに完璧に帰結していると審査では絶賛された。


木下マイヤ
TBWA\HAKUHODO Media Arts Lab Tokyo
クリエイティブディレクター
Cannes Lions 2026 Film部門審査員

ユーモアの可能性

カンヌライオンズのFilm部門のサブカテゴリは、業種や形態、ストラテジーなどで分類されているものがほとんどですが、唯一「表現手法」に焦点を当てたサブカテゴリが「Use of Humor」です。2026年は世界中からあらゆる笑いのスタイルが勢揃いした、まさに豊作の年だったと言えるでしょう。シュール、ブラックユーモア、デッドパン、ドライな笑い、フィジカルコメディ、天丼ネタ、不条理ギャグ、耳に残るコミカルな歌、そして下ネタまで。シリアスなメッセージに着地するためにあえて前半をコメディにしていたMissing People「Based on a true Story」の構造は、サブカテゴリ自体を拡張するようなユーモアの可能性を感じました。また前回のカンヌライオンズでCre-ative Marketer of the Yearを受賞したAppleのスピーチで、こんな一節がありました。「AIは広告を殺さない。しかし、救ってくれるわけでもない。それは自分たちがやらなければならない」。今年のFilm部門では、まさにこの言葉を体現したような作品が多かったように感じました。人間の手でつくり上げたクラフトで魅了するHornbach「No Project...

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