2020年代のブランデッドムービー 縦型動画の定着は何を意味するのか?

公開日:2026年8月31日

  • 佐藤雄介、高橋律仁

2000年頃を“黎明期”とし、多様な手法が試行錯誤されてきた「ブランデッドムービー」。特にデバイスやプラットフォーム、消費者行動が急速に変化しつつある2020年以降のブランデッドムービーにおいては、どのような手法や表現が生まれてきたのだろうか。マクドナルド「ティロリミックス」などで音楽とブランドを融合させた新たなブランデッドコンテンツを打ち出した電通の佐藤雄介さんと、スマートフォンの“縦型”の特性をいち早く活用したlyrical schoolのMV『RUN and RUN』の企画を手がけたTBWA\HAKUHODOの高橋律仁さんが、エポックメイキングな事例を挙げながらこれまでの変遷を振り返ります。
※一部の画像は『ブレーン』バックナンバーより転載

AI時代に見直される「リアリティ」の価値

佐藤 2020年頃からの5~6年を振り返ったとき、まずひとつのキーワードとして挙げられるのが「リアリティの再定義」です。そのエポックメイキングな例となったのが、大塚製薬「ポカリスエット」の「でも君が見えた」篇(2021年)でした。テレビCM主導の企画ではありましたが、爆発的に跳ねたのはWebで公開されたメイキング映像がきっかけだったと思います。あの床がぐにゃぐにゃと波打つ巨大なセットを俳優が駆け抜けるメイキング映像が話題になりましたよね。本編もさることながら、「この規模のものを、CGを使わずにリアルで撮っている」という事実そのものが、ブランドの姿勢として、本編以上の価値を持って広がっていきました。

高橋 まさに時代と強くリンクしていましたよね。2021年のACC TOKYO CREATIVITY AWARDSでは、フィルム部門Aカテゴリー(テレビCM)で「でも君が見えた」篇がシルバー賞を獲る一方で、Bカテゴリー(オンラインフィルム)では「THE FIRST TAKE」がグランプリを獲り話題を集めました。TikTokやInstagramのエフェクトで誰でも動画を「盛れる」時代になったからこそ、あえて引き算をして「一発撮りのヒヤヒヤ感や緊張感」という、加工なしのリアルで戦う。ライブとも通常のミュージックビデオ(MV)とも違う新鮮さがありましたし、ちょうどコロナ禍の真っ只中で、自宅でコンテンツを見る体験自体が再考されていたタイミングとも重なっていたと思います。

佐藤 相鉄ホールディングスの相鉄東急直通記念ムービー「父と娘の風景」(2023年)もまさにその系譜ですよね。父と娘の12年を描いた超絶技巧のワンカット撮影の裏側(BTS = Behind The Scenes)が大きな話題になりました。昔はメイキングといえばDVDの特典映像のような“おまけ”で、映像自体もつくりが粗いものが多くありましたが、今やメイキングこそがプロモーションの主役になりつつあります。

ハリウッド映画でも『ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング』(2025年)でトム・クルーズがプロペラ機に本当に張り付いて飛んでいるメイキング映像が話題になったし、『スパイダーマン:ブランド・ニュー・デイ』(2026年)ではスタジオで合成でもつくれる時代に、“街中で実際にアクションしている”様子のわかる動画が予告に使われていました。プロモーションの在り方自体が変わってきたなと感じます。

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ブレーンでは2022年、2000年代以降に登場した映像表現を中心とする「ブランデッドコンテンツ」の20年史をまとめました。それから4年ほどの間に、ブランド動画の表現や手法は大きな転換点を迎えています。中でも「縦型動画」「ショート動画」が定着し、最近ではその反動から「スロー」な表現がむしろ新鮮である、といった声さえも聞かれるように。トレンドが目まぐるしく変わる状況で、企画や演出に携わるクリエイターにとって最適解を見つけることが難しくなっています。そのような背景のもと、今号ではブレーン発のオンライン動画コンテスト「BOVA」の縦型動画部門の募集が始まるタイミングに合わせ、2020年代のブランド動画の在り方を大検証していきます。

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