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ブランドの物語を紡ぐクリエイターの思考とプロセス

逆境の中で社内外を励ました正直な企業広告

2020年の「さ、ひっくり返そう。」や21年の「レシートは、希望のリストになった。」など元旦広告で企業としての在り方を語ってきた西武・そごう。その裏ではクリエイターとの協働の中で各年の社会状況に合わせさまざまなストーリーを見出してきた。百貨店が苦境に立たされる中、前向きなメッセージはどのように生み出されているのか。

2020年の元旦に出稿した新聞広告「さ、ひっくり返そう。」。

2021年の元旦に展開した広告「レシートは、希望のリストになった。」。

シニア向けのコミュニケーションから企業広告へ

2016年から西武・そごうの広告を担当しているのは、フロンテッジのチーム。当時から企画に携わってきたシニアクリエイティブディレクター 上島史朗さんは、これまでの経緯をこう話す。「最初はシニア世代向けのコミュニケーションに取り組みたい、とご相談いただきました。その頃実施した、ファッションアイコン『アイリス・アプフェル展』に大きな反響があったようで、自分を持った新しいシニア世代を大事にしたい、という想いを持たれていて。そこで樹木希林さんをアイコンに、“年齢関係なく自分が一番好きな装いをしようよ”と呼びかけるプロジェクト『Advanced Mode』が発足しました」。

コンセプトは「年齢を脱ぐ。冒険を着る。」。この取り組みの好評を受け、数カ月後の17年の元旦には「年齢を脱ぐ。冒険を着る。」というコピーを発展させた「わたしは、私。」という新聞広告を出稿。その「わたしは、私。」というフレームのもと、18年には木村拓哉さんを起用した「正解は、ない。『私』があるだけ。」、翌19年には安藤サクラさんを起用した「女の時代、なんていらない?」といった元旦広告を展開してきた。

19年の広告は「#MeToo」などジェンダー平等への働きかけが表面化してきたことを背景に制作したものだったが、「賛否両論さまざまな声をいただいたのが事実。チームで何度も反省をし、翌年以降の広告表現に活かしてきた」と上島さん。改善すべき点はあったものの、これら一連の広告を経て2016年の後半には11位以下だった業界別就職人気ランキングの流通部門(東洋経済調べ)で、2019年の前半の調査時には1位に。当初はシニア向けとして始めたコミュニケーションが若年層までリーチしたのは嬉しい誤算でもあった。

働く人へのメッセージにシフト

その一方で2019年10月、西武・そごうは大きなニュースを発表する。「2020年8月から21年2月にかけて5店舗を閉店する」という内容だ。「これを受け、社長から広告を通じてどうにか従業員たちを元気付けたいとお話しいただきました」と上島さん。「それまでは社会状況を受けて企業の方針を世に発する方向性の広告でしたが、この年から、世の中との対話という広告の役割は大前提の上で、西武・そごうで働く皆さんを奮い立たせる方にシフトしていきました」とコピーライター 山際良子さんも話す。

働く人々を元気付けるために企業として何を語るべきか。その議論の末に生まれたのが、幕内最小の力士 炎鵬晃さんを起用した新聞広告「さ、ひっくり返そう。」だ。ボディコピーを上から読むと“土俵際”で劣勢に追い込まれた者のネガティブな内容に、反対に下から上に向かって読むと、劣勢でも最後まであきらめずに粘り続ける者を描いたポジティブな内容となる。

「『ひっくり返す』というコンセプトを受け入れてくださった時点で、すごく正直なクライアントだなと思いました。もちろん5店舗閉店と...

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物語の力によって人々にメッセージを広く伝える、ストーリーテリングの手法。オンライン動画をはじめ尺の自由度が高まり、SNS など媒体の選択肢が広がったことで広告発のコンテンツにおいても物語を紡ぐ力が求められている状況といえるでしょう。今回は、ストーリーを基軸とした映像やデジタルクリエイティブの事例のほか、これらを生み出してきたクリエイターにフォーカス。映画やドラマや小説とも異なる、広告という場だからこそ機能するストーリーの生み出す思考とプロセスに迫ります。

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