2018年、経済産業省・特許庁によって提唱された「デザイン経営」が、再び注目を集めている。先の見えない時代において、理想とする未来を自ら描き、つくり出す──そんなデザインの力が、経営の打開策になりうるためだ。2025年4月には、デザインや知財関連の実践者や専門家が結集する「デザイン経営推進機構(JIDD)」が始動。その理事も務めるヤンマーブランドアセットデザイン代表・長屋明浩さんが、自らの実践経験をもとに、経営とデザインの融合のこれからを語る。
長屋明浩(ながや・あきひろ)
ヤンマーブランドアセットデザイン代表取締役社長。トヨタ自動車に約30年勤務、レクサスブランド企画室長、トヨタデザイン部長、子会社社長を歴任。その後ヤマハ発動機に移籍。執行役員クリエイティブ本部長として全商品デザイン開発とグローバルブランディングを8年担当し、同様のニーズからヤンマーに転籍。ヤンマーホールディングス取締役チーフブランディングオフィサーを経て、現職。
デザイン経営の現状
2018年に経済産業省と特許庁が発表した「『デザイン経営』宣言」から7年が経ち、今再びデザイン経営に注目が高まっていると感じています。振り返ると、コロナ禍はひとつの大きな転換点でした。社会全体が生命の危機に直面し、経営の存続が危ぶまれる企業も少なくない中で、経営にデザインを取り入れる流れはいったん止まり、関心が一時的に陰った時期でもあったと思います。
しかしその後、IT環境が急速に整備され、時代の変化のスピードは加速。先の見えないVUCAの状況下だからこそ、人間の創造性をどう拡張し、新しい価値を生み出していくか。その問いに向き合うための重要なアプローチとして、デザインの存在感は以前よりも強まっていると感じています。
特許庁では2019年から、「知財功労賞」において「デザイン経営」を取り入れながら知的財産を有効活用している企業を表彰しています。その基準のひとつが「デザイナーが経営に参画している」こと。それは非常に重要な指標ですが、ある意味では途中段階だと思っています。
最終的なゴールは、経営者も社員も全員がクリエイターになること。ここでいうクリエイターとは、発想したり思考を転換させたりする力を持った人のことを指します。デザイナーやクリエイティブ職に就いている人だけを経営者にすべき、という意味ではありません。むしろ、職種にかかわらず、創造的な視点を持てるかどうかが重要だと考えています。
私は以前からデザイン経営に関する講演を行ってきましたが、最近では参加者の職種が広がっています。かつては、大企業のブランドや広報の担当者が多かったのですが、最近は中小企業の社長が増えています。特に顕著なのは、中小企業ほどブランディングに関心を持ち、経営にデザインを取り入れようとしている...


