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体験価値と安心・安全を両立 新しい空間デザイン

ここだけの「時間を処方する」ホテル

2021年10月1日、金沢市の香林坊にブティックホテル「香林居」がオープンした。エントランスに大型の蒸溜器が置かれた、ホテルらしからぬ構えが特徴的。このプロジェクトのプロデュースをはじめ、コンセプトやロゴ、空間デザインなどクリエイティブ面をリードしたのはサン・アドだ。建設中にコロナ禍を経験したホテルが打ち出す、“今の人々にフィット”した価値とは。

“簡素な静けさ”を重視した「香林居」の客室。要所にアーチ形を取り入れた。

コンセプトは「新たな金沢時間を処方する」

「香林居」は、築50年の九谷焼をはじめとする世界の工芸品を扱うギャラリー・眞美堂のビルをリノベーションして生まれたホテルだ。サン・アドでホテルのプロデュースや空間デザインを担ったのは初めてのこと。その経緯について、クリエイティブディレクター/コピーライター 藤村君之さんは次のように振り返る。

「2018年に、眞美堂の自社ビルが耐震の問題で、補強か、取り壊して新築するかの選択を迫られました。オーナーと建築会社とで話した結果、壊すのは惜しい、とリノベーションをすることに。金沢を拠点にした建築家の方に声がかかり、金沢の商業施設やホテルのブランディングを複数手がけていた当社のプロデューサー 土井泉にまっさらな状態から“一緒に考えてほしい”と声をかけていただいたのがきっかけでした」。

当初は複合商業施設など、さまざまなアイデアが挙がるなかで、藤村さんはまずコンセプトを定めることを提案する。

「単なるリノベーションではなく、このプロジェクト自体を意味のあるものにしたいと考えたんです。広告制作の場ではよくある手法ですが、何をつくるか、という“手段”ではなく、その先に目指す“ビジョン”を言語化することで、チームのメンバーもより能動的に動けるようになります。眞美堂のビルには金沢の約50年の歴史が蓄えられていることもあり、“時間”というものがひとつの鍵になると考えました。またビルのある香林坊という地域は、兼六園や金沢21世紀美術館など各時代の最先端の美が集まる特徴的なエリア。時間と場の特性を来た人に体感してもらえる場所とは──と考え、ホテルが有力候補となりました」(藤村さん)。

だが、建築会社もサン・アドもホテルの運営経験は無い。そこで「HOTEL SHE,」などを手がける龍崎翔子さん(L&Gグローバルビジネス)をアサインし、共にコンセプトをより明確に、先鋭化していった。

「龍崎さんは香林坊という地を深掘りし、再解釈してくれました。この地名は、還俗して蒸溜で目薬をつくり薬商になったお坊さんの名に由来します。その目薬で前田利家公の眼病を治したという資料もあるそうです。これをふまえて、コンセプトを“新しい金沢時間を処方する”に決め、歴史性をベースにしたホテルにしようということになりました」と、藤村さん。ホテル名も「香林」の語を借り、「香林居」に。ここで出てきた“蒸溜”や“処方”などのキーワードは、その後、ホテルのコンテンツへと繋がっていく。

このコンセプト設計において重要なことを藤村さんはこう話す。「その物事のストーリーを抽出し、“借り物”ではなく、オリジナルなものであること。そういうものに人は惹かれるんですよね。僕らはそれを言語化してビジュアル化する仕事なわけですが、それは今回のホテルに限らず、クリエイティビティ全般に共通するものだと思います」。

キービジュアル(左)。「眞美堂」の歴史を継承し、窓のアーチ形をシンボルに。Harriet Lee-Merrionさんのイラストを組み合わせた。ロゴ(左下)は寺島響水さんの書を元に作成。

蓄えられた時間を体現する 幾何学的なアーチの数々

コンセプトをもとに全体のアートディレクションを担当したのは、サン・アドの...

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コロナ禍を経て、少しずつ人の移動が増え始めている今。人が集まる空間、時間がもたらす価値が重視されるとともに、心理的な安心・安全の担保なども求められるようになっています。足を運ぶことで得られる特別な体験のクオリティと、その価値を損なわない範囲でのパーソナルスペースの確保、あるいは透明性の高いサービスの提供も含め、従来とは異なる価値提供が求められているともいえます。2020年以降にオープンした施設などを中心に新たなコンセプトを打ち出している空間デザインに触れながら、その解決策を探ります。

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