プレイヤーか、それともクリエイターか

公開日:2026年10月05日

  • タツナミシュウイチ氏、三井淳平氏、横田知子氏

「遊び」の発想から、まだ誰も見たことがない新しいものづくりが生まれるのではないか――そんな仮説のもと、リアル・バーチャルの垣根を越えて新たな楽しみ方・学び方をつくり出すクリエイターが登場。集まってくれたのは、JAXA、関西電力、SMBCなど、さまざまな企業・団体と「マインクラフト」を活用した教材ワールドを制作、YouTubeやイベント、大学での研究などを通じて、デジタル・ゲーム教育に取り組むタツナミシュウイチさん。東京大学在学中に「東大レゴ部」を創部、2011年には日本人として唯一のレゴ®認定プロビルダーに選出され、現在「レゴはアートになるのか?」をテーマに東京藝術大学大学院で研究を続ける三井淳平さん。空間・テクノロジー・デザインなどさまざまな領域を横断するエクスペリエンスディレクターとして活躍、国内外の企業やブランドのインスタレーション、常設施設、体験設計を幅広く手がける、ワントゥーテンの横田知子さん。プレイヤーとクリエイターの思考、さらに遊びと学びの関係を考えます。

デジタルの世界に“住んでいる”感覚

タツナミ ゲーム教育に関わり始めたのは十数年前、「マインクラフト」と出会って、これは教育に使えるんじゃないかと思いついたんです。JAXAさんと宇宙について学べる「LUNARCRAFT」や、SMBCさんと経済を学べる「クエスト・オブ・ファイナンス」といった教材をつくったり、ワークショップに登壇したり。デジタル・ゲーム教育研究者として大学で教壇に立っています。

三井 大学院時代にレゴのプロとして活動を始めて、就職した会社を辞めてからはレゴ1本で生活しています。基本的には企業や自治体から依頼を受けて作品をつくるクライアントワークがメインで、昨年からはアートとしてのレゴブロックの可能性を探るために、東京藝術大学の大学院に通い始めました。

横田 ワントゥーテンというクリエイティブカンパニーで、エクスペリエンスディレクターをしています。企業やブランドの課題を紐解き、空間やデジタルを横断しながら、コンセプトから体験として形にするのが主な役割です。私にとって「遊び」は、課題を体験へ変えるための重要なツール。人が「ついやってしまう遊び」に翻訳することで、自然と人の行動や感情が動いていく。皆さんと方向性は少し違うのですが、そんな視点から体験をつくっています。

タツナミ 僕がデジタルの世界に没頭し始めたのは、もう30年ぐらい前のこと。今の子たちのずっと前からデジタルネイティブだった自覚があって、もはや向こうの世界に住んでいる感覚になっています。作家の平野啓一郎さんが「分人」と表現したように、自分以外の自分が、マイクラやVRChatの世界に分かれて存在している感覚。最近ではデジタル世界のものをこっち側に持ってくる試みもしていて、YouTube動画で、実際に石を採取してマイクラの世界にある玄武岩ブロックを再現しました。

横田 リアルマインクラフト(笑)。最近では触覚を体感できるデバイスも登場して、ますますデジタルとアナログの境目がなくなっていますよね。

タツナミ ごちゃ混ぜになっていくんだろうなと思いますが、デジタルの世界に行っても生き物としての感覚は残るもの。たとえばVRの世界でも、近くにいきなり知らない人が寄ってくるとちょっと引いちゃうんです。もっとどっぷりハマっている人だと、自分のアバターに付いている耳や尻尾に触られると、その感覚がわかるとか。

横田 デバイスなしで、ですよね?

タツナミ はい。バーチャル美少女ねむさんの『メタバース進化論』(技術評論社)にも登場する「ファントムセンス(VR感覚)」という現象です。そういう感覚が得られるとすれば、向こうの宇宙で太陽を見ると光だけでなく熱さも感じられる。学んだり体験したりしたものは残るし、学習としても価値のあるものになるだろうと。

三井 現代アートの世界でも「知覚」は重要なキーワード。私は今年、マイクラを100時間くらいプレイしていますが、その理由は物理法則が違う世界に行ってみたかったから。ブロックが空中に浮いているなんて、リアルの世界では絶対にありえないので。

タツナミ 僕もゲームの世界だと頭ではわかっていても、なんとなく気持ちが悪いし、違和感を覚えます。

三井 レゴをつくっているときは常に重力に支配されているので、その世界を変えてみる。重力がない世界の知覚を体験することで、普段は意識していなかった重力を意識するようになる。リアルがリアルであることに気付くという構造が生まれるのが、バーチャルの面白さだと思います。

「好奇心」と「余白」を掛け合わせる

横田 サンリオピューロランドで、遊びながら英語を学ぶことができる「BUDDYEDDY WONDERFUL CLUB」というアトラクションを開発したんです。そのときも「どうすれば英語を勉強してもらえるか」ではなく「どうすれば夢中になって、つい英語を話してしまうか」を考えていました。皆さんは普段、ゲームや遊びのロジックをどうやって活かしているんですか?

タツナミ 僕が大事にしているのは「好奇心」。子どもたちは普段からマイクラで遊んでいて、もっとやりたいという根本の部...

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