李禹煥『全版画 1970-2022』(阿部出版、2022)
僕が現代美術家の李禹煥さんの作品と出会ったのは、アメリカの美術大学に在学していた頃のことです。海外で暮らす中で自分のアイデンティティについて考えていた時期で、大学でさまざまなアーティストの作品を目にする機会がありました。その中で特に目を引いたのが、李さんの作品でした。
最初に触れたのは、キャンバスに描かれたペインティング作品でした。その特徴は、情報やノイズが極限までそぎ落とされていることです。筆でシンプルな線を描いたり、点を打ったりするだけの表現を見て、アートは単にクラフトの面でつくり込むだけではなく、定着の手前にある「頭の中でどれだけ考え抜かれているか」が重要なのだと...


