
(左)1992(右)2017
ノートパソコンの代表的なブランドである「ThinkPad」が、1992年の発売から25周年を迎えた。発売当時は、インターネットはおろか、パソコンすら普及していない時代。ノートパソコンの先駆けとして、ビジネスパーソン向けに文書作成などのオフィス業務を支援する用途で生まれた。レノボ・ジャパン コマーシャル製品事業部 部長の大谷光義氏は、「ThinkPad」の当時を次のように振り返る。
「1990年代前半は、ノートパソコンの販売価格が70万円を超えるような時代。そんな中で『ThinkPad』は黒の"ブコツ"なデザインが好評で、持っている喜びを感じられる存在だった」。
その後、1995年にマイクロソフトから「Windows95」が発売されて、パソコンが爆発的に普及していく。「ThinkPad」も機能性の高さと堅牢性を武器に、ビジネスパーソンを中心にファンを獲得していったが、2005年に大きな転換期を迎える。
開発・発売元であるIBMが、レノボにパソコン事業を売却し、「ThinkPad」ブランドもレノボに継承されることになったのだ。IBMの撤退は大きな話題となり、当時は知名度が低かったレノボに引き継がれることに、ユーザーからの戸惑いの声も少なくなかった。
「最初の2年間は、レノボでもThinkPadの価値が変わらないということを強くアピールするコミュニケーションを展開することで、不安を払拭させるように努めた」と大谷氏。実際に開発スタッフ数100名は、そのままレノボに移籍し、製品の開発・設計は変わらず受け継がれた。
IT機器は時代によって、求められる機能やデザインが変化していく。その中で、なぜ四半世紀にわたってユーザーから使い続けられてきたのか。
同社でThinkPad担当を務める吉原敦子氏は、「キーボードの中央にある赤いトラックポイント、そして全体の黒い筐体という『ThinkPad』のただずまいは変わっていないことが要因のひとつ。その一方で、使いやすさを追求するための改良を常に重ねている。例えばキーボードも発売時の7列から6列に変更したとしても、入力のしやすさ、打鍵感など、以前からのユーザーにも、新しいユーザーにも受け入れられるよう、細部にこだわっている」と語る。
そうした、"ものづくり"への姿勢が高い評価を受け、法人向け製品であり、かつ今でも40代から60代のビジネスパーソンを中心に支持が根強い。その一方で、若年層に向けた認知度向上は課題であり、今後は強化の方針だ ...