マーケティングとセリングは似たような概念であるものの前者は顧客・市場に軸足が、後者は自社・商品に軸足を置き、字義以上に概念の異なるものです。だからこそ顧客視点のマーケティングをセールスの現場に取り入れ、セリングではなくマーケティング発想の営業組織と進化することが、市場環境が厳しくなる現代において、成果の出る組織運営につながります。本連載では大前提となる顧客理解の深め方、価値提案の設計に始まり、提案の再現性、組織連携、データ活用、インサイドセールスやカスタマーサクセスとの接続まで、セールスの最前線を多角的に考察。市場環境が変化し、売り手都合の営業が通用しにくい時代に、営業戦略をアップデートするための実践知を届けます。
※本稿は『AdverTimes.』に掲載した記事を一部編集し、転載しています。
人々の「AI慣れ」がアウトプットの価値を下げる
AIの普及がもたらす課題のひとつとして、前田氏は「慣れ」による感動の鈍化を指摘する。これは決してAI特有の現象ではない。前田氏は、手書きの手紙とパソコンで打ち、印刷した手紙を例に挙げ、手書きに感動するのは「そこにかけた手間暇が透けて見えるから」と説明する。この“手間暇”が伝わる表現こそが人の心を動かす。AIが量産するアウトプットにより、あらゆるコンテンツが平準化していくからこそ、逆に手間暇の見えるものが際立つ時代が来るという逆説的な構造だ。
だからこそ前田氏が強調するのは、AI登場の前後で資料作成の本質的な基準はまったく変わっていないという点。...

