データだけでは届かない 消費者インサイトの真実

公開日:2026年1月30日

  • 矢村 功氏(Ko & Co.)

日々のKPI達成やアルゴリズムへの最適化を過度に追い求めるあまり、マーケターが「数値の呪縛」に陥り、その先にいるはずの顧客を見失ってしまうという課題が浮き彫りになりつつある。物理学の世界からマーケティングに転じ、観測の限界や、ファクトと意味の関係と向き合ってきたKo&Co.の矢村功氏が、KPI設計と消費者インサイトの掴み方をひもとく。

ロジックやデータは想像力を解き放つための踏み台

ずいぶん昔の話になるが、私は大学院まで応用物理学を学んでいた。同級生に天才と称されたO君がいた。理論物理専攻でホワイトボードいっぱいに数式を殴り書きする男だった。

ある日、彼がさらりと告げた。「僕の想像力に、僕の右手が追いつかない」。少々キザだが、研究をかじった人なら頷けるはずだ。発見はひらめきや仮説が先に立ち、ロジックはそれを追いかける“ペンを持った右手”にすぎない。ロジックやデータは、想像力を解き放つための踏み台だ。強固で高い踏み台は必要だが、そこからジャンプする勇気がなければ何もつかみ取れない。この感覚はマーケティングにも当てはまる。

私がキャリアをスタートした2000年代初頭、データといえば断片的な定量調査とテレビCMのGRPくらいしかなく、「世の中を動かすのはクリエイターのセンスだ」という空気...

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AI時代の「顧客理解」マーケターが今、知るべき視点・手法

顧客接点がデジタルシフトしたことで、マーケターはかつてないほど多くのデータを入手することができるようになりました。一方で、「データはあるのに、その先にある生活者の実像が見えにくい」という課題を抱える場面も少なくありません。本特集では、データドリブンが加速するAI時代において、いかにしてデータの先にある人の感情や動機、さらには背景となる文脈を捉えることができるのか、その方法論を探ります。KPIの再定義や分析デザイン、行動経済学による非合理性の解明から、ナラティブ、ペルソナ設計、共創の実践までを網羅。テクノロジーと人間理解を対立させるのではなく、統合的に活用し顧客理解の解像度を高める思考法を、第一線の知見から解明していきます。

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