「バズるほどいい」の終焉 Brain rot時代に問われる、マーケターの責任②

公開日:2026年6月12日

  • 山根 宏彰氏(富士通)

若者の認知を削る「注意の採掘」̶̶人間の有限な注意を、鉱物資源のように抽出して広告収益へ換える仕組み̶̶に、マーケターも無自覚に加担しているのではないか。前編で提示したこの問いは、プラットフォーム企業だけの問題ではありません。後編では、プラットフォームが直面する矛盾と、世界的な規制の潮流、そして私たちが進むべき「信頼経済」への道筋を考えます。

顕在化する「脳の腐敗」 注意能力の破壊という危機

月刊『宣伝会議』6月号の本連載では、若年層の間で広がる「Brainrot(脳の腐敗)」という言葉と、その背景にある深刻なエビデンスを概観した。WHOやPewの報告に見るスマホ依存の加速に加え、東北大学の川島隆太教授らによる、頻繁なネット習慣と言語性知能の低下、および脳の灰白質・白質容積の発達への影響を示唆する研究は、業界に大きな衝撃を与えている。

心理学者ジョナサン・ハイトが「不安や抑うつ以上に大きいのは、人間の注意能力そのものの破壊だ」と警告するように、リアルの遊び中心からスマホ中心へと切り替わった「大規模な配線替え」の代償は、はかりしれない。特に短尺動画の過剰消費が、持続的注意の弱まりや、記憶想起時の神経活動の低下と関連しているという最新の知見は、もはや公衆衛生上の危機として測定可能な段階に達している。

そこで浮き彫りになったのは、私たちマーケターの姿だ。短尺で離脱させない動画をつくり、最初の2秒でフックを入れる。こうした日々の最適化が、実は...

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