第一線のマーケター・クリエイターが明かす、キャリアアップの奥義。今回は、積水ハウス イノベーション&コミュニケーション(イノコム)でCMO(最高マーケティング責任者)兼CDDO(最高データ&デジタル責任者)を務める木田浩理さんにこれまでのキャリアについて伺いました。良い転職は、良質な情報を入手することから始まります。「こんなはずではなかったのに…」とならないための、転職情報をお届けします!
Q.学生時代はどんな将来を見据えていましたか?
学生時代は、いわばモラトリアム期間でした。まわりが意欲的な学生ばかりなのに対し、私自身は没頭できるものがない。転機となったのは、ある政治家との出会いです。大学3年のころからボランティアで選挙の手伝いを始めます。そこは、人の感情や地域の空気がダイレクトに動く、とても刺激的な現場でした。
活動を通じて、地域社会や地方行政への関心が深まり、大学院では政策や社会について学びました。そのなかで、地域を支える基盤である通信インフラにも興味を持つようになり、大手通信企業に就職しました。
Q.大手通信企業ではどんな仕事を?
法人営業に配属されましたが、入社9カ月で退職します。政治家の方から、「また手伝ってくれないか」と声をかけられたためです。
朝4時からの送迎、駅でのビラ配り、戸別訪問、ポスター掲示のお願いなど、幅広い仕事を担いました。非常に忙しい日々が続き、1年3カ月で次の道を考えることになります。それでも、この経験で「さまざまな相手の懐に入り、その人に合わせて伝え方を変える」というコミュニケーションの基礎が身に付きました。
秘書としてさまざまな業務を担うなかで興味を持ったのが「データ」です。次の就職先は、職歴にとらわれず可能性を評価してくれた、統計解析ソフトを扱う外資系企業でした。内勤営業として入社したのですが、顧客に自社の商材についてきちんと伝えるためには、自分自身が統計解析を理解していなければなりません。営業の合間に必死で勉強し、実際のデータを解析してみる。それを繰り返すうちに、当時、地方自治体の案件を担当していましたが、自治体のマスキングされたデータを見ると、そのデータをどう読み解けばよいかが自然と頭に浮かぶようになりました。
営業とデータサイエンスは、一見すると離れた領域に見えるかもしれません。ただ私の場合は、営業としてデータに向き合ううちに、少しずつ分析する視点も身に付いていきました。
Q.それで、分析職への転身を考えたわけですね。
次の転職先に選んだのは大手百貨店で、婦人服売り場の販売担当係長になりました。小売業なら、お客さまの行動とデータの距離が近く、分析を実際の施策につなげやすいと考えたからです。
当時の私はデータ分析に自信を持ち、「数字を示せば現場にも伝わる」と考えていました。しかし実際に働いてみると、それだけでは十分ではないことに気づきます。
販売スタッフが向き合っているのは、一人ひとりのお客さまです。その背景を理解せずにデータだけを伝えても、十分には伝わりません。数字だけではなく、現場の声や温度感、実際の体験を見ることが大切だと気づきました。
そこで私は売り場に飛び込み、現場をゼロから学ぶことにしました。スタッフにお客さまとの会話を手書きで記録してもらい、それを集めてテキストマイニングで分析するなど、独自の方法でデータ活用を進めました。売れる色や形の傾向を分析し、それを売り場の施策につなげていきました。そうした経験を重ねて、全店の営業戦略立案を担う営業企画部へ異動しました。
その後は外資系EC企業や広告会社でデジタルマーケティングを経験。データサイエンティストという肩書を持つようになったのは、テレビ通販企業に入社したときです。さらに日本企業でのデータサイエンスに挑戦したいという思いから大手損害保険会社へ。データとマーケティングを社内に広め、講演会への登壇や著書の反響を経て、入社して2年半後の41歳のとき、最年少で初代CMOに就任しました。
Q.キャリアにおいて大切にしている指針は?
現職のイノコムには、45歳のときに転職しました。CMO兼CDDOとして、マーケティング戦略、デジタル、AI活用、人材育成など複数のテーマを横断し、少数精鋭のメンバーとともに取り組んでいます。
「40代半ばで転職?」と驚かれるかもしれません。ですが、人生の時間には限りがあり、だからこそ、挑戦できる機会を大切にしようと常に考えています。
私の専門はマーケティングだけではありません。営業、販売、データ分析など幅広い領域に身を置き、自分の可能性を広げてきました。そうした経験を生かし、データと現場をつなぐ「ビジネストランスレーター」として、さらに役割を広げていきたい。イノコムには、その挑戦を受け止めてくれる土壌があると感じました。
私がキャリア選択で大切にしているのは、「自分の可能性が広がるかどうか」です。安定も大切な価値だと思いますが、私自身は、新しいことを学べる道に魅力を感じます。一つひとつの専門性を大切にしながら、領域を越えて視野を広げていく。その姿勢が、私のキャリアを形づくってきたのだと思います。
積水ハウス イノベーション&コミュニケーション株式会社
CMO 兼 CDDO
木田 浩理氏
慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科修了。大手通信企業、外資系ソフトウェア企業、大手百貨店、大手外資系EC企業などを経て、データサイエンス×マーケティングの領域で幅広く経験を重ねる。大手損害保険会社ではCMOを務める。2025年より現職。上智大学大学院応用データサイエンス学位プログラム非常勤講師。一般社団法人日本エビデンスベーストマーケティング研究機構代表理事。
聞き手
株式会社マスメディアン
取締役
国家資格キャリアコンサルタント
荒川 直哉
マーケティング・クリエイティブ職専門のキャリアコンサルタント。累計4000名以上の転職を支援する一方で、大手事業会社や広告会社、広告制作会社、IT企業、コンサル企業への採用コンサルティングを行う。転職希望者と採用企業の両方の動向を把握しているエキスパートとして、キャリアコンサルティング部門の責任者を務める。「転職者の親身になる」がモットー。
お問い合わせ
マスメディアン
〒107-0062 東京都港区南青山3-11-13 新青山東急ビル9階
E-mail:webmaster@massmedian.co.jp
URL:https://www.massmedian.co.jp/

