企業のマーケティングが最高効率に達する一方、情報過多により広告が記憶に残らない課題が生じている。フロンティアインターナショナルの北澤翔平氏は、デジタルでは代替できないリアルな「体験」に着目。感情を動かし、共感とUGCの循環を生み出す「HEAT(ヒート)メソッド」の有効性を語った。
年3000件の体験創出から見えた「熱量資産」の高め方
AI技術の発展により、マーケティングの効率化や広告制作の高速化が進む一方、生活者が1日に最大1万件もの広告メッセージに接触する現代では「広告が記憶に残らない」という課題が生じている。この状況に対しフロンティアインターナショナルの北澤翔平氏は、「人は感情が動いた時に初めて行動へ変わる」と指摘する。年間3000件の体験創出を手掛ける同社は、こうした体験を通じて生まれる感情の蓄積を「熱量資産」と定義し、これを中長期的に高める独自のフレームワーク「HEAT(ヒート)メソッド」を開発した。
HEATメソッドは4つのプロセスで構成される。第1の「Hook(フック)」は世の中の文脈を捉えた参加理由の設計、第2の「Emotion(エモーション)」は五感に訴える空間による感情の揺らぎの誘発である。第3の「Amplify(アンプリファイ)」では参加者が自発的にUGCを投稿したくなる仕掛けで熱量を周囲へ増幅させ、最後の「Transform(トランスフォーム)」によって体験を良質な思い出へと昇華し、ブランドとの深いファン関係へ変革させる。
AIで正解を選ぶ時代だからこそ感情を揺さぶるリアル体験を
北澤氏はこのメソッドが機能した直近の具体例として、東京都渋谷区・MIYASHITA PARK内の複合型エンターテインメント施設「or」にて開催された応援イベント「三井不動産SAMURAI BLUE 3D EXPERIENCE Presented by SAISON」を提示した。
本施策ではワールドカップに向けた応援気運の高まりという世の中の潮流を「Hook」としている。さらに、XR技術を用いてまさにピッチに立っているような没入空間を構築することで、来場者の「Emotion」を揺さぶる設計がなされている。加えて、最先端のフォトスポットなどSNS投稿を促すギミックを要所に配置し、来場者がメディアとなって情報を広げる「Amplify」の構造を確立。これらを通じ、単なる認知を超えた良質な思い出を形成し、継続的な応援行動を促す「Transform」へと導いていると説明した。
北澤氏は「これからのマーケティングにおいては、共感した生活者がブランドを語り、その熱量が周囲に広がる循環が重要となる。一人ひとりが自身の良かった体験を広げてくれる状態こそが、一過性ではない資産になると考えます」と語る。日常のあらゆる判断をAIが代替し、失敗しない選択が前提となる時代だからこそ、感情を揺さぶるリアルな体験の価値はより一層高まっていくのだ。
同社は現在、大学と連携し、脳科学や顔認証、AIディープラーニングを用いて「良い体験」がもたらす感情変化を視覚化する研究にも着手しているという。
北澤氏は、代替不可能なリアル体験の価値を強調。「熱量は決して偶然生まれるものではなく、緻密な設計によってこそその価値を高めることができる」と語り、セッションを締めくくった。
フロンティアインターナショナル
マーケティングプランニング本部
シニアプロデューサー
北澤翔平氏
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