「うなぎパイ」柄のキャリーケースが大バズリ!視覚に訴えるブランド資源を活かした成長戦略

公開日:2025年10月03日

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  • 大塚 莉子氏(春華堂)

静岡県浜松市に本社を構える老舗菓子メーカー・春華堂は、看板商品である「うなぎパイ」のブランド価値を基盤に、ユニークな経営戦略を展開している。近年SNSで話題を集めた「うなぎパイ」デザインのグッズもその一例だ。そこには、個別ブランドとしての「うなぎパイ」を活かしつつ、コーポレートブランド「春華堂」そのものを成長させる二段階のブランド戦略がある。

SNSで「うなぎバン」が話題に累計販売10万個へ

1961年に発売を開始した春華堂の「うなぎパイ」は、現在、あえて静岡県内と近隣県に販路を限定。割れやすく繊細な商品の特性もあり、“地域で買う価値”を高める戦略をとってきた。

一方で、全国にブランドを知ってもらうための手段として、「うなぎパイ」のデザインを活かしたグッズが重要な役割を果たしている。2000年代に登場したストラップから始まり、2022年には「うなぎパイオリジナル絆創膏(うなぎバン)」が誕生。元々はキャンペーンのノベルティだったが、SNSで話題になったことで商品化され、2025年8月時点で累計販売10万個に到達した。

広報室の大塚莉子氏は、「ファンが包装紙で御朱印帳やポーチを自作されていたことがヒントになりました。グッズを通して、『うなぎパイ』への愛着や思い出を形にし、さらに深いつながりを築きたいと考えています」と語る。

こうした取り組みは、瞬間的な売上やバズ狙いではなく、長期的な目線でファンとのコミュニケーションを育むことが目的だ。「こういうのがあったら面白いのでは?」と投げかけ、タイミングを見て拾い上げてもらう。この柔軟な文化が、春華堂の強みになっている。

また、大塚氏は続ける。「『うなぎパイ』自体も、長い時間をかけてお客さまに育てていただきました。5年後、10年後にお客さまとどのような関係でいたいかを考え、企画・デザイン・イベント運営などは可能な限り自分たちで行える体制を整えています」。

「うなぎバン」と「うなぎパイ」キャリーケース(写真は63L)。キャリーケースは中面にもロゴがちりばめられている。

デザインと味を守ることがブランドの根幹

同社が大切にしているのは、「うなぎパイ」のデザインや味を変えずに守り続けることだ。「安易に味やデザインを変えて、お客さまが抱いている『ああ、これこれ!』という思い出が変わってしまわないように」と大塚氏は説明する。

地域に根付く旗艦商品としての価値を守りながら、グッズで生活者との接点を増やし、思い出を重ねてもらう―この両立が、同社の戦略の核になっている。

「温故創新」のもと新たな価値提案を続ける

同社が経営理念として掲げるのは「温故創新」。伝統を守りながら新しい挑戦を積み重ねるという姿勢を体現している。

例えば、「うなぎバン」を企画したのは入社4カ月目の社員だった。春華堂には、正社員からアルバイトまで提案できる改善提案制度があり、部門長の推薦で社長に届けば、そのままプロジェクトリーダーを任されることもある。

さらに、2021年には旧工場跡地に複合施設「SWEETS BANK」を開設。地域住民に無料でスペースを開放し、ワークショップや料理教室の場を提供している。また、地元高校生との商品開発も実施。ヤマハとのコラボレーションで開発した「オカリナモナカ」は、共に音楽の都・浜松を盛り上げる施策として注目を集めた。

2021年4月にオープンした複合施設「SWEETS BANK(スイーツバンク)」。浜松いわた信用金庫と協業し、春華堂の本社機能のほか、「SHOP春華堂」、浜松いわた信用金庫森田支店、コミュニティスペースなどを併設している。建物のデザインは、テーブルと椅子をイメージしており、同社が大切にする「団らん」を表現する。

ブランドを長く続けるために 地域全体の幸せを目指す

かつて売上の9割を占めていた「うなぎパイ」は、現在7割、将来的には5割まで引き下げる計画だ。大塚氏は、「将来的には、『うなぎパイの会社が何かしている』という認識から、『春華堂?ああ、うなぎパイの会社か!』という逆転の認知になったら嬉しい」と語る。

同社は地域限定の旗艦商品としての「うなぎパイ」を土台に、企業ブランド「春華堂」を主役に据えた、長期的な成長戦略を描く。

「この先10年、50年と会社やブランドが愛され続けるためには、多くの人に地域に足を運んでもらうことが大切です。つまり、私たちだけが儲かるのではなく、地域全体がハッピーにならないと意味がないのです。『夜のお菓子』のキャッチコピーに込めた“団らん”の精神を、これからも事業全体で体現していきたいと考えています」(大塚氏)。

「うなぎパイ」は1961年、同社2代目社長である山崎幸一氏が、浜松ならではのお菓子として考案した。職人による手づくりでデリケートな商品特性上、通信販売でも購入することはできない。

春華堂
広報室
大塚 莉子 氏

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