データの中の「違和感」を起点に、人間を動かす本質的な理由を探る

公開日:2026年9月30日

  • 守口剛氏(早稲田大学)

あらゆる購買履歴や行動ログ、SNS上の発言が可視化され、生成AIによる集計や仮説抽出も容易になった時代。しかし、マーケティングの実務現場において、「インサイト」の重要性は薄れるどころか、むしろ高まっている。観測されたデータや表層的な顧客の声(VOC)の「背後」にある本質的な理由とは何か、早稲田大学の守口剛教授が解説する。

観測されたデータの裏にある「目に見えない本質的理由」

マーケティングの実務において「インサイト」という言葉は日常的に使われているが、日常的に扱うデータとの違いを整理できている者は多くない。現場で扱う情報にはいくつかの階層が存在する。調査で得られる「ニーズ」、購買行動として現れる「ファクト」、それらを集計した「データ」、SNSなどに寄せられる「顧客の声(VOC)」である。これらは生活者の状態を理解するうえで重要な情報だが、基本的には観測された事実や表れている反応である。

これらに対して「インサイト」とは、観測されたデータや表層的な行動・心理の「背後にある本質的な理由」を指す。重要なのは、インサイトは消費者本人が事前に気付くことができないため、「消費者本人に直接尋ねても、必ずしも本質的な理由まで言語化できるとは限らない」という性質を持つ点だ。

生活者は自分自身の行動の真の理由を言語化できているわけではないため、表面的な質問には通り一遍の回答しか返ってこない。だからこそ、マーケターが観測データの奥底にある本質を「洞察(インサイト)」する必要があるのだ。

データ過多の時代だからこそ高まる「インサイト」の価値

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いま改めて考える「インサイト」の正体。

企業はかつてないほど多くのデータを手にしています。購買履歴、SNS上の声、検索行動、位置情報、さらには生成AIによる分析まで、生活者を理解するための情報は飛躍的に増えました。しかし、その一方で、「なぜ、この商品を選ぶのか」「なぜ、その広告に心が動くのか」といった、人の本質的な動機を捉えることは、むしろ難しくなっています。データは行動を示しても、その背景にある感情や葛藤までは語ってくれません。だからこそ今、改めて注目されるのが「インサイト」です。本特集では、インサイトとは何かという基本的な考え方を整理するとともに、ニーズやファクトとの違い、人を動かすインサイトの見つけ方、そして商品開発やブランド戦略、コミュニケーション、クリエイティブへとつなげるプロセスを、多様な実例とともに解説します。さらに、生成AIがリサーチや分析を担う時代に、マーケターやクリエイターだからこそ果たせる役割とは何かを考察。データ時代だからこそ求められる「生活者理解」の本質を、考えます。

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