食品開発の現場で10年以上を過ごし、かつ一児の父でもあった長谷川真吾氏は、200人以上の母親との対話を経て、2014年に「株式会社ビーンズ」を起業。オーガニックベビーフード「Baby Orgente(ベビーオルジェンテ)」を開発し、広告費ゼロで伊勢丹などの百貨店展開・主要メディア掲載を実現、年商数億円規模へと成長させた。その根底にあるのは、「届けたい体験(CX)」を先に定義し、そこから逆算してすべてを設計するという開発哲学だ。
業界の裏側を知るプロとしてひとりの「父」として立ち上がる
「子育てがこんなに大変だなんて、知らなかった」。
商品開発に先立ち、私は200人以上の母親たちに会い、対話を重ねた。そこで突きつけられたのは、理想とはほど遠い育児の過酷な現実だった。「頑張ってつくっても食べてくれない」と、潤んだ目で語る彼女たちの姿が、今も胸に焼き付いている。
当時、食品業界の開発現場にいた私には、ひとつの風景が見えていた。市販のベビーフードの多くは、高度な製造技術と効率的な供給網により、安価で便利な「生活の助け」として完成されていた。しかし一方で、コストや効率を優先するがゆえに、素材本来の風味や、...

