第一線のマーケター・クリエイターが明かす、キャリアアップの奥義。今回は、PayPayカードでマーケティング本部 ユーザーエンゲージメント部部長を務める佐々木仁さんにこれまでのキャリアについて伺いました。良い転職は、良質な情報を入手することから始まります。「こんなはずではなかったのに…」とならないための、転職情報をお届けします!
Q.クレジット会社のどこに魅力を感じたのですか?
私の大学時代は就職氷河期真っただ中の1990年代。周りは就職活動に励んでいましたが、私は型通りに社会に出て働くことが受け入れがたくて。唯一興味を持ったのがクレジットカード業界でした。
クレジットカードはサイズが国際規格で統一されていますが、会員向けの付帯サービスには多様性があります。画一性の中に各社の個性がひしめき合う点に魅力を感じたのと、これから伸びる業界だと考え、マイカルカード(現在のポケットカード)に就職しました。
しかし、入社後の道のりは決して順調ではありませんでした。最初の仕事は、親会社が運営するスーパーマーケットでの会員獲得です。来る日も来る日も店頭で「カードつくりませんか?」と勧誘。つい、しつこく勧めてしまい、お客さまに激怒されたこともありました。
Q.それでも続けた理由は?
マーケティングとの出会いがあったからです。あるとき、ふと「クレジットカードって、使ってもらってなんぼだよな」と思ったんです。いくら会員が増えても、使われなければ1円のもうけにもなりません。
そこで勧誘業務の傍ら、利用促進の企画を考えることに。目を付けたのは当時、広く流通し始めた無洗米です。手づくりのクーポン券を配り、無洗米をカードで購入した場合に割引価格を適用する作戦でした。親会社のスーパーマーケットに交渉し、新聞折込チラシにも載せてもらいました。その結果、私のいたスーパーが無洗米の販売で全店舗1位を獲得。この経験を境に、次第に仕事が面白くなっていきました。
お客さまに「無洗米はおいしくないんでしょ?」と言われて、私が「ぬか臭さがなくておいしいですよ」と返すと、「じゃあ買ってみようかしら」とその場で行動が変わる。このリアルなやりとりに、マーケティングの本質が凝縮されていました。私の長いマーケター人生で成功体験はいくつかあります。今はデジタルマーケティングが主流になり、クリック率など成果を数字で出すこともたやすくなりました。でも、あの「これぞマーケティング」という手触り感は、いまだにデジタルでは超えられていない気がします。
Q.勤続13年で転職した背景は?
2013年に、家族の希望で京都に移住しました。転職先は、前職の10分の1ほどの規模のカード会社。当時はまだ、居住地を優先して企業を選ぶ人は珍しかったと思います。ですが、会社のマーケティング部門で管理職を任され、成長に貢献できることに大きな魅力を感じたのです。
今のPayPayカードへの転職を決めたのは2年前。それまではポイントが貯まるカードへの切り替えや利用促進を手がけ、業績アップに貢献したものの、マーケティングの実感が持てずにいました。お客さまがポイントに魅力を感じてカードをつくっても、企業間でのポイント合戦が過熱すれば、いずれ還元率で大手に負けてしまう。だからこそ、マーケターとしてはポイント以外の勝てる企画を考え、常に拡大路線を取りたいのですが、会社との方針に違いが生まれてしまいました。そんな経緯から、2023年にPayPayの子会社であったPayPayカードへ転職しました。
2014年にコード決済が登場した際、すでに決済端末機が普及する日本では流行しないと考えられていました。しかし私は、スマホで支払える手軽さに大きな可能性を感じていて。のちに2018年より参入したPayPayが、大規模施策「100億円あげちゃうキャンペーン」などを実現させ、急拡大を遂げる様子を目の当たりにしたんです。PayPayカードなら、PayPayと組み合わせることで今までのカード業界にはない、新たな挑戦ができるかもしれないと入社しました。さらにリモートで働ける点も、子どもが4人いる私には大きな決め手になりました。
Q.キャリア選択の軸に働き方もあるんですね。
私たち夫婦は家事も育児も半々でやりたいと考えています。それに、リモートワークは多くの人と連携するマーケターには適した働き方だと思います。私は17人のチームをマネジメントしていますが、リモートだとむしろコミュニケーションを頻繁に取れますし、手元の資料や作業を大勢で確認できますから。
Q.PayPayカードでこれから取り組みたいことは?
入社してわかったのはカード業界以外の経験者が多いためか、慣例に縛られない斬新なアイデアが次々出る環境であること。そして、カードとアプリのどちらで決済してもほぼ同じ体験が得られる、連動性の高さ。今の目標はカードを使ってもらうことより、PayPayならではの便利で心地よい支払いをカードでも実現することです。PayPayのカルチャーと革新的な決済サービスが合わされば、きっとデジタルでも、お客さまに直接語りかけて行動変容につなげる、手触り感のあるマーケティングが再現できると思います。

PayPayカード株式会社
マーケティング本部
ユーザーエンゲージメント部 部長
佐々木仁 氏
1999年、マイカルカード(現在のポケットカード)入社。3年間の利用者獲得業務ののち、法人営業、与信管理、経営企画など多岐にわたる職種を経験。2007年から産業能率大学大学院で経営管理を学ぶ。2013年、京都移住を機に、ニッセン・ジー・イー・クレジット(現在のニッセン・クレジットサービス)にマーケティング部門のトップとして入社。2023年より現職。

聞き手
株式会社マスメディアン
取締役
国家資格キャリアコンサルタント
荒川直哉
マーケティング・クリエイティブ職専門のキャリアコンサルタント。累計4000名以上の転職を支援する一方で、大手事業会社や広告会社、広告制作会社、IT 企業、コンサル企業への採用コンサルティングを行う。転職希望者と採用企業の両方の動向を把握しているエキスパートとして、キャリアコンサルティング部門の責任者を務める。「転職者の親身になる」がモットー。
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