“楽器を持たないパンクバンド”としてブレイクし、新しいアイドル像を開拓したBiSH。メンバーの一員であるモモコグミカンパニーさんは、作詞を手がけたり、グループのヒストリー本を執筆するなど、メンバーの思いを文字に起こしてファンに伝えてきた。グループが解散し、文筆家として一歩を踏み出した彼女が大切にしたいファンとのコミュニケーションとは何か、話を聞いた。

「いまBiSHにいる自分」が感じることを言葉で紡ぐ
2015年にデビューした6人組のガールズグループBiSH(ビッシュ)。ライブを中心に音楽活動を展開した彼女たちは、『NHK紅白歌合戦』や数々の音楽番組にも出演するなど、幅広いメディアに取り上げられ、注目を高めていった。
惜しまれながら2023年6月に解散したBiSHは、メンバーそれぞれがソロ活動に移行。その中のひとり、モモコグミカンパニーさん(以下、モモコさん)は、メンバーの中で最も多くの楽曲で歌詞を手がけてきた。言葉が好きで、文章を書くことを得意とし、2018年には、BiSHのヒストリー本『目を合わせるということ』(KADOKAWA/角川文庫)を刊行するなど、文才も発揮している。

『目を合わせるということ』 モモコグミカンパニー(KADOKAWA/角川文庫)
モモコさんがBiSHに加入したのは大学生の時。偶然受けたオーディションで思いがけず受かってしまったという。「大学生活にあまり馴染めなくて、自分がやりたいことってなんだろうとずっと考えていました。アイドルになりたいとか、人前で歌いたいというよりも、自分の言葉を音楽にのせてみたかったんです。そしたらプロデューサーからファーストアルバムに収録する曲の歌詞を書いてみないかと言われて、そこで思いがけず夢が叶いました。もしそれができていなければ1年くらいで辞めていたと思います」。
芸能界デビューとともに憧れていた歌詞づくりも同時に手がけることができ、当時はとにかく楽しかったと話すモモコさん。しかし手始めに、昔から言葉を書き溜めていたノートを引っ張り出し、そこからピックアップして歌詞をつくったところ、ことごとくボツになってしまったという。
そこで「“いまBiSHにいる自分”が感じたことを言葉にすることが大切だと気持ちを切り替えて歌詞を書くように心がけました」とモモコさん。そこから徐々に、楽曲に言葉をあてはめるコツをつかんでいったという。
ファンの人生にも関わる言葉 心がけたのは「責任ある」発信
ライブではMCも担当していたモモコさん。曲の合間のトークでは、どんな内容をどんな言葉でファンに伝えるのか、毎回スクリプトをつくり、制限時間内でしっかり収まるようにと事前にボイスレコーダーで録音して確認するという慎重な準備をする。もちろん全てスクリプト通りではなく、トークをしながら話したい内容が浮かんだときはそれも交えながら話す。ただ、モモコさんの中には、人の気持ちだけでなく、人生そのものにすら影響を与えかねない「言葉」の持つ力を侮らず、一節一節を丁寧に紡いでいこうという信念がある。
「グループに関する話題からメンバー個人に関することまで、責任を持って...