「配信して終わり」を卒業したい!! 戦略的プレスリリースの企画書の書き方

公開日:2026年6月02日

  • 片岡英彦氏(東京片岡英彦事務所)

「広報関連の新たな企画を実現しようとするも、社内で企画書が通らない……」そんな悩める人のために、広報の企画を実現するポイントを伝授。筆者の実務経験をもとに、企画書作成に必要な視点を整理していきます。

配信前に整理すべきこと

プレスリリースを書く仕事は、慣れるほど判断が難しくなる。文章の書き方や内容、配信手順に問題がないにもかかわらず混乱が生じる場合、その多くは「書く前の整理」に原因がある。

リリースは社内外で判断の材料として使われ、配信後も参照され続ける文書である。ところが実務では、「どう書くか」の検討から始まりがちだ。その結果、配信後に前提の確認や補足説明が必要になり、対応が後手に回る。

今回は、リリースの文章表現や書き方自体ではなく、配信前に何を整理しておくべきかを、企画書という形で整理していく。まず確認したいのは、そもそもリリースを何のために出すのか、という原点だ。その基本から確認していきたい。

プレスリリースは何のために出すのか?

リリース=判断の起点

リリースは、新しい商品やサービス、制度変更、取り組みの開始を、外部に向けて告知するものという理解自体は間違っていないが、単なるお知らせ文ではない。リリースには単に情報を伝える以上の役割がある。

リリースが配信されると、社内外で様々な判断が動き始める。メディアは記事化を判断し、社内では、内容の説明や他の資料への流用が検討される。営業や採用の現場でリリースが引用されることもあれば、想定外の相手から問い合わせが入ることもある。つまり、リリースは、読む人に判断を促す材料になっている。この前提が共有されなければ、リリースを出した後に違和感が生じやすくなる。「そういう意味で使われるとは思っていなかった」というような言葉が後から出てくるのは、珍しいことではない。

リリースの内容は正しく、事実関係が整理されていても困り事が起きるのは、リリースがどこでどう使われるかという想定を発表前に十分に整理していないからだ。リリースはあらゆる文脈へ流れ込み、繰り返し見られることになる。その過程で配信側の意図と受け取る側のズレが生じると、説明や調整が必要になる。リリースで知らせることだけを目的にしていると、読み手の判断が動くまで想定できなくなる。

リリースを配信する理由や、社内外でどのような判断がなされるのか、どういった場面で参照されるのかを先に整理することが「企画」という考え方につながる。

コラム
配信後に説明が増えるプレスリリース

リリース配信後に追加説明が必要になった場合、以前であれば、私は反射的に「表現が悪かった(間違っていた)のではないか」と考えていた。文を補足するなど何度も修正を繰り返したが、状況はほとんど改善しなかった。社内向けに十分説明したつもりの内容が、配信後に別部署でまったく違う前提で使われていたケースがあった。新しい取り組みの開始時期や対象について、私は「想定」として頭の中で整理していたが、リリースの文面ではその前提を正確には明示していなかった。結果として、営業部門では想定だったはずの内容が確定情報となり、別部署では「すでに決まった方針」として資料に引用されていた。

内容は事実だったが、「どこまでが確定で、どこからが条件付きの話なのか」を切り分けていなかったため、読み手がそれぞれの判断で補うことになってしまった。リリース配信後に求められた説明のほとんどは、内容の修正ではなく、「どの前提で書いた情報なのか」を後からそろえる作業だった。

この経験以降、配信後の説明が増えても文章表現を直すのをやめた。代わりに、配信前に「読み手の判断に必要な前提がそろっているか」を確認するようになった。リリースを見て最初に判断するのは誰か、その判断は社内でどう使われる前提か、確定情報として扱ってよい範囲はどこまでか。これらを整理してから配信すると、後に発生する確認や説明は明確に減った。

配信後に説明が増えてしまう状況は、配信前の整理が足りていたかどうかを教えてくれるサインだ。文章を直す前に、まず疑うべきなのは設計のほうだと、今では考えている。

書く前にすべき3つの確認

対象、場面、前提を想定

リリースを書く前に確認しておきたいことがある。それは、実務の中では当たり前すぎて意識しないまま通り過ぎてしまう、「問い」だ。

1つ目は、「誰が見るか」だ。多くの場合、最初に思い浮かぶのはメディア各社の記者だろう。しかし、実際には社内の別部署、経営陣、取引先、一般消費者もリリースを目にする。それぞれが異なる立場と前提で読んでいるのだ。同じ一文でも、読み手が変われば、受け取り方も変わる。「誰に向けて書くか」を決められないまま進むと、後から解釈の幅が広がってしまう。

2つ目は、「どこで使われるか」だ。配信されたリリースは、想定以上に多くの場所へ流れていく。記事化されるだけでなく、営業資料に転用されたり、採用ページに引用されたり、社内説明用の資料に追加されたりする。書き手が関与しない形で使われる場面も多く、文脈は自動的に補われることになる。補われ方が書き手の想定と異なると、後で説明や修正が必要になる。だからこそ、最初からリリースがどこで使われる前提なのかを考えておく必要がある。しかし、読み手の用途を完璧に想定することはできない。少なくとも、「これは外に出てもよい」「ここから先は補足が必要」という線引きを、自分の中で持っておきたい。

3つ目は、「どこまで述べているか」だ。リリースでは、事実と解釈が同じ文面に並ぶことになる。新しい取り組みや背景、期待される効果などが書かれることが多いが、どこまでが確定した内容で、...

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