リアルの価値が再認識される中、オフィスは企業にとってコミュニケーションツールとしての存在感を高めている。その戦略に迫った。
素焼き煉瓦も用いた街に溶け込む佇まい
新拠点の外観。大小2つの箱をわずかにずらし積み重ねることで、周囲への圧迫感を軽減。高さ約7メートルの基壇部には愛知県碧南市で焼き上げた素焼き煉瓦を使用し、4個に1個をランダムに4ミリ手前に出すことで機械的な印象を避けた。7層からなる構成で、各階を大きな吹き抜けがつなぐ。
撮影者:阿野太一(以下、本稿すべて)
河村電器産業は2026年4月、名古屋市東区に管理部門を集約した新拠点「アンサンブルセット」を稼働。7層を貫く吹き抜けにアートと緑を配した建物は、働く場であると同時に、企業文化の発信地として設計されている。
採用課題が促した拠点の再定義
同社が全国の営業拠点の移転・リニューアルに着手したのは2023年のこと。それまでは立地や快適性よりもコストが優先され、古いビルに拠点を構えることも少なくなかったが、配属された社員のモチベーション低下が課題のひとつとして見られたという。同社コーポレートコミュニケーション部長の田中美奈氏は「人材の確保が重要になる中、思い切って便利で余裕のある空間にしようと考えました」と振り返る。中四国支店を皮切りに、九州や北海道など主要拠点の刷新を進めてきた。
名古屋の中部支店も、2012年に購入した築約30年のビルの老朽化を受けて建て替えが決定。当初は営業機能も含めて集約する計画だった。しかし、最上階にホールを、2階には天...

