「いつまで同じ言葉を繰り返さなきゃならないんだよ」大富士電力広報部の新井田岳が吐き捨てる。突然の嵐に見舞われたような波状攻撃だった。公共性の高い企業の宿命だが、自然災害時の電力供給や停電事故、原子力発電所でのトラブルや住民運動など、一般企業に比べて記者たちと接する機会は多い。本社の向かい、芝生が美しい公園に横づけされた街宣車から罵声の限りを浴びせられ、それを取材しようとする記者たちと揉みあいになったこともある。
北陸設計で行われた税務署の監査。総務部の竹川慶次は、総務部長の立華要三が何らかの不正に関わっていることに気づく。北陸設計の主要取引先である大富士電力では、広報部の新井田岳が地元新聞の記者から電話を受ける。内容は、同社の役員が日本海市の副市長から多額の金品を受け取っているというものだった。