システムリニューアルに伴いログインIDのパスワードを再設定ください。

システムリニューアルに伴いログインIDのパスワードを再設定ください。

海外法人で起きたデータ流出 最悪の事態の先にあるもの〈中編〉

公開日:2025年5月30日

    【あらすじ】

    UDeTAのシンガポール現地法人が管理するアジア本部データ処理センターで発覚したデータ流出事件。東京本社の広報に所属する坂垣祐介は、現地でメディア対応を担当することになる。従業員による故意の流出だったことが確認され、本社とのリモート会議を行うが、海外事業部長の駒形祐作の言葉はどこか他人事だった。

    諦めたら終わりだ

    アラームの電子音で目が覚めた。カーテンを開けると、目の前のビルが朝陽に照らされ輝いている。“運悪く”昨日まで休暇で滞在していたマレーシアの隣国に留まることになった。昨日までの解放感がずいぶんと遠い記憶のように感じる。坂垣祐介は一息吐くと背伸びをした。

    ホテルから10分ほど歩くと、ビルの案内板に“UDeTA ASIA Headquarters Data Cente”の表示がある。UDeTAのアジア本部データ処理センターだった。15階建てビルの八階から10階までの3フロアを占めている。

    「おはようございます」昨夜一緒だった大城巧が受付フロアの8階で出迎えた。広い事務所内には数名しかいなかった。「半数以上はリモート業務で、四分の一は10階のセンターに張りついています。ここは休憩か事務作業をしている者がいるだけです」坂垣の疑問を察したのか大城が説明する。

    「こちらへどうぞ」通された会議室にはモニターが何台かあった。「9時30分から対策会議を開くことになった」朝食のビュッフェ料理を食べているとき広報部長の武嶋良悟から指示を受けた。センター側の出席者は大城を含む日本人スタッフ二人と現地スタッフ一人、そして坂垣。現地スタッフが今回のシステム異常を発見した元ホワイトハッカーだ。

    対策会議は定刻に始まった。東京本社の見慣れた顔が画面に映し出される。「さっそくですが、内容を改めて確認します」本社海外事業部リーダーの豊川幸太郎が身を乗り出しながら進行を始めた。「一昨日深夜、正確に言えば昨日午前1時03分、外部からの不正アクセスを検知・発見しました」センター長の大城が厳しい表情で伝える。「外に流れたデータはどれぐらいだ?」取締役で海外事業部長の駒形祐作が尋ねる。「120万です」「何社のデータ?」「15社です」ふぅっと駒形が頬を膨らませる。「うちの従業員に間違いないんですか?」豊川が質問を重ねる。「さっきまで確認していましたが、ほぼ間違いありません」大城が答えると「ほぼ……とはどういうことだ?」「履歴とプログラムから追跡しています。ただ、入り込んだ場所の特定がまだできていません」

    簡単に言えばセキュリティ...

この記事の続きを読むには定期購読にご登録ください

月額

1,000

円で約

3,000

記事が読み放題!

この記事をシェア

この記事が含まれる連載

広報担当者の事件簿

「まさかのクライシス発生!あなたならどう対応する?」 小説で学ぶ、危機広報。

記事一覧

MEET US ON