活動成果を“見える化”し、経営陣を納得させる広報企画書を書きたい!

公開日:2026年1月09日

  • 片岡英彦(東京片岡英彦事務所 )

「広報関連の新たな企画を実現しようとするも、社内で企画書が通らない……」。そんな悩める人のために、広報の企画を実現するポイントを伝授。筆者の実務経験をもとに、企画書作成に必要な視点を整理していきます。

経営に資するための成果と指標を分かりやすく

広報企画書に求められる役割が変わりつつある。かつては露出量や広告換算値を並べるだけでよかったが、いま経営層が知りたいのは「施策が事業にどう寄与するのか」という一点である。SNSやメディア対応の枠を超え、経営戦略や中期計画に広報の視点をどう組み込むか。難しい統計を振りかざすのではなく、成果の見方(何を、どの条件で、どう比べるか)と、指標の定義(名称・算出方法・データ源・測定頻度・担当)を “部品” として差し込み、経営会議でも通用する説得力を持たせたい。加えて、成果が想定を下回った場合の学び方を標準化する記述も不可欠である。「効果検証の部品」を企画書に落とし込むために、その具体例と明日から使えるフォーマットを整理したい。

視点1
投資判断ができる企画書

なぜ効果検証を企画段階で入れるのか

経営の問いはいつも単純だ。「その施策は、何を、どれだけ、いつまでに変えるのか」。しかし多くの企画書は、露出件数や広告換算といった広報内の数字に閉じ、経営が見たい認知度・好意度・再購入・応募・投資家理解などの変化に直結する説明が欠ける。さらに、実行後に慌てて検証方法を追加すると、データの取り直しや追加調査でコストも意思決定のスピードも失われる。だからこそ、企画段階で「どう測るか」を内蔵しておく必要がある。

本文には、KGIとKPI、比較の対象・期間・外部条件までを最小限のフォーマットで置く。企画書は施策の説明書ではなく、投資判断のための資料だ。意思決定の言語は「比較」と「根拠」である。成果の見方(何と何をどの条件で比べるか)と、指標の定義(名称・算出方法・データ源など)という2つの部品を本文に入れることで、会議室に確かさと速度をもたらすことができる。試行を重ねる領域ほど、前後比較や実施・未実施の対象を組み込み、未達時の原因分析までをあらかじめ合意しておくことが効果的だ。測り方が先にある企画だけが、限られた予算と時間を次の学びに変換できる。それが広報の責務である。今日からすぐに始めよう。

評価設計欄の基本構造

評価設計欄は、企画の「測り方」を本文の中で一望できるように整理するための枠である。まずKGIは、経営と直結する最終到達点を数値と期限で明記する。

次にKPIを示す。これは運用段階でのハンドルとなる指標であり、定義・算出式・データ源・頻度・担当を1行で添える。さらに基準値を設けて、「どこで手を打つか」をあらかじめ決めておく。視聴完了率、好意度平均、来場率、FAQ解決率などが代表的だ。

成果の見方は、結果をどう確かめるかの方法である。実施店舗と未実施店舗、イベントの前後、対象群と類似群など、比較の相手・期間・条件を1行で書き、季節や販促、価格、在庫、競合ニュースなど外部要因の扱い方も添えておくと評価に迷わない。

最後にフィードバックの運用を記す。四半期ごとにレビューを行い、原因を「到達率」「導線」「CVR(転換率)」の3つに分けて分析し、メッセージ、チャネル、配分、クリエイティブのどこを動かすかを記録する。これにより、評価と改善を一体化させた実務的なサイクルを回すことができる。

図1 評価設計欄の項目例

KGI(経営直結目標)
● 若年層の認知度を10ポイント向上(期限:2026年度末)
● 内定承諾率を5 ポイント改善
● 再購入率を3ポイント向上

KPI(運用指標)
● 動画視聴完了率
● ブランド好意度の平均値
● 採用イベント来場率
● FAQ解決率

効果の見方(結果の確かめ方)
● 実施店舗 vs 未実施店舗
● イベント実施前後の比較
● 対象群 vs 類似群(外部条件=季節、販促、価格など)

フィードバック(改善の運用)
● 四半期ごとにレビューを実施
● 原因を「到達率/導線/CVR」の3視点で分解
● 結果をもとにメッセージ、チャネル、媒体配分を見直す

この項目は、施策をどう測るかを本文中で明確に示すための基本構造である。詳細なデータや算出式は付録や別紙に任せてもよいが、この核となる記述を本文に残すことで、会議は説明から判断へと変わる。成果も未達も次の一手に転換できる。評価設計は、施策を動かすための判断の地図である。

コラム
「数字なしの議論は迷子になる」─会議室に持ち込み忘れた測り方

広報の企画書で最初に必要なのは、派手な表現案ではなく成果の判定方法を先に書くことだ。究極的にやることは、以下の4つだけでよいと考えている。

① 何をどれだけ、いつまでに変えるか(目的の数字)。
② どの指標を、どの式とデータで測るか(指標の定義)。
③ 何と何を比べるか(実施と未実施/前と後/条件をそろえた比較)。
④ どの水準で成功とみなすか(合格ラインと判定時期)。

これらを導入段落の直後に4行で明記すると、議論は説明から判断へと切り替わる。狙い・測り方・合格ラインなどが一目で共有され、会議は「できるかどうか」という “疑心暗鬼” から「どう実行するか」の段階へと進む。数字は必ずしも「冷たい記号」ではない。迷いを減らし、意思決定を促すための「共通言語」なのだ。どんな企画でも、この4つがまず先にあれば、未完成の段階からでも広報活動を前へと動かせる。

かつて、この4行を入れ忘れたことで会議が紛糾(漂流?)したのを目にしたことがある。どんなに良い意見は出ても結局のところいつまでも結論が出ず、最終的に判断は翌週以降に持ち越されてしまった。以来、「何を・どう測るか」を本文に書かない企画書は作成しないと決めた。判断の速さは、測り方の明確さで決まるのだ。

視点2
比較で成果を可視化させる

成果をどう比べて示すか

広報の企画書で重要なのは、難しい分析ではなく「どう比べて成果を示すか」を骨太に整理することだ。「何と何を比べるか」「どの単位で見るか」「結果に影響する条件をどう扱うか」。この3点を企画書の中で明確にしておくだけでも、施策の成果を説明しやすくなる。意思決定に有効な「比べ方」を、誰が読んでも再現できるような形にすることが目的だ。具体的には下記の通り。

①「何と何を比べるのか」を明確にする....

この先の内容は...

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