AIによって伝えるコストが劇的に下がった。一方で情報が溢れ、「知る」ことの価値は下がり続けている。ならば広報は何を生み出すべきか。年間約300社の社内広報を手がける立場から、情報を共有する仕事から体験を共有する仕事へという変化が語られた。
生成AIの普及で、広報の仕事はどう変わるのか。年間約300社のインターナルコミュニケーション(社内広報)を手がける産業編集センターの石原良平氏は、現場の肌感覚として「情報を共有する仕事から、体験を共有する仕事へ」のシフトが起きていると語った。
AIが下げた「伝えるコスト」
原稿を書く、要約する、翻訳する、画像や動画をつくる。AIはこうした作業を肩代わりし、「伝えるコスト」を劇的に下げた。かつては月1回の社内報を出すだけでも大変だったが、今や毎日でも配信できる。一方で石原氏は、情報が溢れることで「知る」価値が下がっていくと指摘する。
似た構図を音楽のサブスクリプションに見る。CDもプレーヤーも必要だった時代に比べ、聴くハードルは劇的に下がった。その分、ライブの市場は拡大している。「知る」価値が下がるほど、「感じる」ことが価値になる。感じるとは、すなわち体験だ。インターナルコミュニケーションの仕事も、「知る」を生む仕事から「感じる」を生む仕事へシフトしている。
社長の問いに社員が答える
石原氏は2つの事例を挙げた。1つはとある企業の社長メッセージ施策。社長就任以来、人となり、日常、興味と毎年テーマを変えて社長を伝えてきた同社が、次に選んだのは「社長の考え方を知る」だった。
企画は4つのステップで進む。まず社長が社員に「会社の未来ってどうなる?」と問いかける。集まった回答から10名を選び、ビデオレターを撮影してもらう。社長がそれを視聴し、一人ひとりにコメントでフィードバック。最後に10名の動画と社長のアンサーをあわせて公開した。
社長インタビューを1本つくれば済む話を、あえて時間のかかる段取りに変えた。一度自分で考えて返すという体験を挟むことで、最後に届く社長からのメッセージが自分ごとになる。時間とステップをかけた理由がここにある。
連絡係からプロデューサーへ
もう1つは某企業の拠点マッチング企画。全国の営業所から代表を集め、ワークショップで各拠点のコミュニケーション課題を洗い出す。課題が近い拠点同士をマッチングし、実際に相手の拠点を訪ね合う。
オンラインでつなげば一度で済むが、あえて時間をかけて会いに行く。働き方や業務改善など、課題の近い拠点同士は話が合う。結ばれたペアはその後も意見交換を続けているという。エンゲージメントを「測る」から、生まれる瞬間を「デザインする」への転換だ。
社内の出来事をどう扱うかにも、その違いは表れる(図)。石原氏はこれを連絡係からプロデューサーへの移行だと表現する。
図 「情報を共有する仕事」から「体験を共有する仕事」へ
出所:産業編集センター
広報の仕事とは文化をつくること、インターナルコミュニケーションとは文化との対話だという。AIで作業が軽くなった今こそ、広報の仕事は本質に近づいている。「情報を出す方法やタイミングの検討など、より効果的なコミュニケーションが実現できる環境だと思います」と石原氏は締めくくった。
産業編集センター
企画営業部 課長
石原良平氏
お問い合わせ
株式会社産業編集センター
〒112-0011 東京都文京区千石4-39-17
TEL:03-5395-5311
MAIL:ad-info@shc.jp

