自社の強みを言葉にしようとして、手が止まる。広報の現場でよくある光景だ。100以上のブランド開発を手がけてきたエイトブランディングデザイン代表・西澤明洋氏は、その原因が企業の内側にある2つの「当たり前」だと指摘する。企業の規模や歴史を問わず使える、価値の発見と伝達の方法論とは。
POINT
1.強みが見えなくなるのは「市場バイアス」と「自社バイアス」が働くから
2.差異化は「程度の違い」ではなく「種類の違い」でつくる
3.アイデア出しだけでなく、戦略立案まで現場を巻き込む
ブランディングという言葉は、使う人によって指す範囲が違います。語源は、家畜に焼印を押して他と区別する行為だと言われています。私はこれを発展させ、「差異化し、伝言ゲームをすること」と定義しています。ブランドに違いを設計し、それが人から人へ自然に伝わるようにする。この2つが揃って、はじめてブランディングです。
そのため、対象とする範囲は広くなります。ロゴやウェブサイトの見た目を揃えることは、その一部にすぎません。本来はその上に経営戦略や商品・サービスの階層があり、すべてに一貫性を通し、5年、10年とかけて育てていくものです。つまり出発点は、「違い」を見つけることにあります。ところが多くの企業は、この最初の段階でつまずいてしまうのです。
壁となる2つのバイアス
経営者や広報担当者に自社の強みを尋ねても、なかなか言葉が出てきません。原因は、2つのバイアスにあります。ひとつは市場バイアスで、自社が属する市場の中での「当たり前」。もうひとつは自社バイアスで、その企業の中だけで通用している「当たり前」です。長くその市場や企業にいると、本当は競合との差異としてあるものが、感じ取れなくなってしまいます。
たとえばケーキをつくる企業なら、しっとり系が流行っているとなれば、他社よりもっとしっとり、となっていく。ところが実際には、お客様はそこに差を見出しにくい。同じ軸線の上でよりベターなものをつくる、この「程度の差」は差異化になりません。
必要なのは、程度の違いではなく種類の違いです(図)。場所が違う、やり方が違う、方法論が違う。むしろカリッとした食感や、持ち運びやすい容器のほうに差異化のポイントが...


