「コーポレートサイト」と「オウンドメディア」。同じウェブサイトであっても両者の性質は異なる。違いを正しく理解することは、企業の戦略的な情報発信の第一歩となる。両者の性質と設計上のポイントについて解説する。
「せっかくコーポレートサイトをリニューアルするなら、オウンドメディアも始めよう」。このような動機でオウンドメディアを運用し始めたものの、思うような成果に繋がらず悩む企業が少なくありません。
本題に入る前に、本稿における「オウンドメディア」の定義を明確にできればと思います。
広報活動においては、自社サイトを活用した積極的な情報発信が欠かせません。企業の基本情報やIR情報などを掲載する「コーポレートサイト」に加え、近年では、ウェブマガジン形式で情報を発信し、定期的に更新する「オウンドメディア」の活用も広がっています。本来「オウンドメディア」は、自社が保有するメディア全般を指す言葉であり、企業サイトや紙の広報誌、SNSの公式アカウントなども広義の意味ではオウンドメディアに含まれます。しかし本稿では、狭義の意味――自社が運営し、情報を継続的かつ主体的に発信するウェブマガジンやブログのようなサイト――を「オウンドメディア」として扱い、話を進めていきます。
当社ではこれまでに100以上のオウンドメディアを支援してきましたが、その中で見えてきたのは、多くの企業がオウンドメディアとコーポレートサイトの本質的な違いを十分に理解しないまま運用を始めてしまうという現実です。失敗に陥るのは以下のようなケースが多いです。
● オウンドメディアに製品紹介の記事ばかり掲載しており読者の興味を引けず、100本近い記事を公開してもアクセスが伸びない。
● コーポレートサイトのリニューアルと同時にオウンドメディアを立ち上げたが、広報担当者がひとりで記事制作を担っており、他の業務が忙しくなったことで更新が止まってしまった。
確かにコーポレートサイトとオウンドメディアはどちらも自社サイト内に存在するため、一見すると似たようなものに見えるかもしれません。しかし実際には、「役割」「ターゲット」「運用目的」がまったく異なります。違いと活用のポイントを詳しく見ていきましょう。
両者の役割、ターゲット、目的
コーポレートサイトとオウンドメディアはどちらも「企業が自社で運営するウェブサイト」です。ですが、その役割や目的、届けたい相手は異なります。この違いを見落とすと、「誰に、何を、どう届けるか」が曖昧なままコンテンツを増やしてしまい、期待した成果につながらなくなる...