現場社員を主役に、 価値をめぐらせる 日本ペイントHDがつくる 社内外の「循環」

公開日:2026年10月30日

  • 日本ペイントホールディングス

現場に眠る技術や仕事の価値を掘り起こし、メディアを通じて社会へ伝える。そこで得た評価を社員や経営へ戻し、モチベーションを高めて次の発信や事業活動へ。日本ペイントHDが進める、広報を起点とした「価値の循環」を追った。

POINT

① 経営課題から「誰を主役にするか」を逆算する

② 現場の価値を掘り起こし、社外からの評価につなげる

③ 得られた評価を社内へ戻し、モチベーションを高めて次の発信へ循環させる

日本ペイントホールディングスの広報戦略は、この数年で重点を大きく変えてきた。

同社 執行役員 インベスターリレーション部長 サステナビリティ部長 広報部長 の田中良輔氏が入社した2019年当時、まず課題になっていたのは、メディアや資本市場との関係だった。田中氏によれば、当時はメディアとの十分な関係構築ができておらず、資本市場からの情報開示に対する評価も低い状況にあった。広報活動もプロダクトマーケティングなどに軸足を置いていたという。

その後、同社では経営体制の変化とともにグローバル化が加速。海外の知見や仕事の進め方を日本にも取り入れ、組織の変革が進んだ。年次や従来の役割にとらわれない若手の登用など、新たな機会が生まれる一方で、長年慣れ親しんできた仕事の進め方が大きく変わることに戸惑う社員もいた。その結果、国内の従業員エンゲージメントが新たな経営課題として浮上してきた。

そこで改めて経営と議論し、広報が重点を置く対象を整理した。中心に据えたのが、「国内従業員」と「国内メディア」である。広報の目的も、単なる認知向上ではなく、従業員のモチベーション向上と事業支援へと置き直した。

この方向転換には、キャリア入社した田中氏自身の実感もあった。

塗料は、建築物や自動車、船舶をはじめ、社会のさまざまなところで使われている。田中氏は入社後、その用途の広さや技術の奥深さに驚いたという。一方で、長く事業に携わる社員にとっては、それが日常の仕事になっている。「外から入ってくると、『塗料はこれほど社会のいろいろな場所で使われているのか』と驚きます。でも、社員にとっては、それが当たり前になっています」と田中氏は話す。社内では当たり前とされている仕事や技術も、社会から見れば価値ある情報になり得る。その価値を社外へ伝え、第三者から評価されることで、社員にも自らの仕事の価値を改めて認識してもらう。そこに、広報がエンゲージメント向上に関与する余地...

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社内外をつなぐ「循環」広報

企業が社会に向けて発信する情報は、それだけで完結するものではありません。メディアでの報道、顧客や投資家からの評価、従業員や取引先の声など、発信の先にはさまざまな反応が生まれます。企業を取り巻くステークホルダーとの接点が増えるなか、広報にも、そうした反応を捉え、次の企業活動へどう生かすかという役割が求められています。しかし、社外から得た声や評価が広報部門の中にとどまったり、掲載実績や数値として報告されるだけで終わったりすることも少なくありません。重要なのは、返ってきた反応を経営や現場、他部門へ戻し、次の判断や発信、事業活動につなげることです。そこでは、社会の変化を捉える力だけでなく、社内にある情報や価値を掘り起こし、部門を越えてつなぐ力も問われます。本特集では、こうした一連の動きを「循環」という視点から考えます。社会から得た反応を、次のコミュニケーションだけでなく、企業活動を支える資産へとつなげる。広報が社内外をつなぐことで生まれる価値を、理論と事例の両面から探ります。

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