「知られていない」と向き合い続けて20年 会社と社会をつなぐ広報は、どう育てるのか

公開日:2026年11月02日

  • 芥川良平氏(古河機械金属株式会社)

「会社の営業」として広報・IRの仕事に向き合い、自社を知るところから始めた芥川良平氏。認知、理解、共感を一つずつ積み重ね、社会から返ってくる反応にも耳を傾けてきた。約20年の歩みから見えてくる、会社と社会をつなぎ、ファンを育てる広報のあり方とは。

自分の言葉で語れるように

─芥川さんが2007年に広報・IRへ異動した当時、何から始めたのでしょうか。

もともと私は営業職をしていました。古河機械金属は転職して4社目で、入社後もしばらく営業を担当していたのですが、「なぜこの製品はこれほどシェアが高いのか」「お客様からどこを評価されているのか」を理解するためのツールが十分に整備されておらず、営業として自社の強みを自分の言葉で語るには情報が足りないと感じていました。

その後、2007年に広報・IRへ異動しました。広報もIRも未経験でしたが、仕事について考えてみると、これは「会社の営業」なのだと思いました。メディアにも、投資家にも、社内にも、会社のことをきちんと語り、理解してもらう。広報やIRは、会社とさまざまな人をつなぐ仕事だと捉えたのです。

そう考えると、まず自分自身が会社を知らなければ始まりません。当時の会社案内や開示資料、コーポレートサイトを改めて見てみたのですが、自分自身が「この会社の強みは何か」を十分に説明できるようにはなりませんでした。

そこで、創業者や会社の歴史を調べ、各事業会社へ足を運びました。「この製品の強みは何か」「どのような場所で使われているのか」と、一つひとつ聞いて回りました。まず自分が事業や製品、歴史を理解し、自分の言葉で話せるようになる。それが最初でした。

同時に、広報やIRの仕事そのものについては、社外の方々からも積極的に学びました。制作会社や代理店など、さまざまな人の話を聞き、「先進的な上場企業はどのような情報開示を行っているのか」「会社案内やコーポレートサイトなどの自社ツールに何が足りないのか」を考えていきました。

─その後、「広報の究極はファンづり」と考えるようになったのですね。

そうです。最終的には、会社のファンを増やすことが広報の役割だと考えています。

ただ、いきなりファンになってもらえるわけではありません。まず知ってもらい、興味を持ってもらう。そして事業を理解してもらい、共感してもらう。その先にファン化がある。私は認知➡興味・関心➡理解・浸透➡共感・ファン化という流れを意識してきました。

そのため、最初に取り組んだのは派手な広告ではありません。まず「理解」の土台を整える...

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社内外をつなぐ「循環」広報

企業が社会に向けて発信する情報は、それだけで完結するものではありません。メディアでの報道、顧客や投資家からの評価、従業員や取引先の声など、発信の先にはさまざまな反応が生まれます。企業を取り巻くステークホルダーとの接点が増えるなか、広報にも、そうした反応を捉え、次の企業活動へどう生かすかという役割が求められています。しかし、社外から得た声や評価が広報部門の中にとどまったり、掲載実績や数値として報告されるだけで終わったりすることも少なくありません。重要なのは、返ってきた反応を経営や現場、他部門へ戻し、次の判断や発信、事業活動につなげることです。そこでは、社会の変化を捉える力だけでなく、社内にある情報や価値を掘り起こし、部門を越えてつなぐ力も問われます。本特集では、こうした一連の動きを「循環」という視点から考えます。社会から得た反応を、次のコミュニケーションだけでなく、企業活動を支える資産へとつなげる。広報が社内外をつなぐことで生まれる価値を、理論と事例の両面から探ります。

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