2015年、「インナーコミュニケーション元年」という視点から、関係の質や対話の重要性を提起した一色顕氏。約10年が経った今、組織内のコミュニケーション環境は大きく変化している。
課題は「膨らんだ」
─2015年に「インナーコミュニケーション元年」と提起されてから約10年が経ちました。当時の「経営方針の理解浸透度や行動の徹底度合いが企業間競争を左右する」という問題意識は、現在どのようになっていると感じますか。
正直に言えば、当時の課題は解決したというより、むしろ膨らんでいる、というより難しくなった感覚があります。その理由は、リモートワーク、AI、人材流動化の3つです。
リモートワークによって、物理的な「場」が失われました。以前は同じ空間、職場で自然に共有されていた空気感や暗黙知が、今は部署単位、プロジェクト単位だけのつながりになり、それらを共有することは極めて難しくなりました。
AIの影響も大きいです。今はAIを使えば、誰でも「それっぽいこと」を言える時代です。だからこそむしろ、「誰が言うか」「どんな関係性の中で伝わるか」が重要になっています。コミュニケーションの中身だけでなく、それを伝えるメディアのマネジメントが必要不可欠になってきました。
さらに人材流動化も進みました。キャリア採用が増え、必然的に仕事は分業化され、文脈の共有が難しい環境になっています。結果、ここでも暗黙知の共有は難しいものとなり、「その会社らしさ」も実感されにくくなってきています。
必要な関係性は会社で異なる
─当時、組織における「関係の質」の重要性を提起されていました。この10年で新たに見えてきた課題はありますか。
この10年、多くの企業が「関係の質」を重視するようになりました。「心理的安全性」というキーワードも広まりました。ただ、その一方で、「関係を良くすること」が目的化してしまったケースも多かったと思います。
例えば、...


