国内外のメンバーがフルリモートで働くアガサ。事業成長と組織拡大の一方、日本と海外の間には少しずつ「溝」が生まれていた。違いをなくすのではなく、理解し、仕事を進めるための共通言語に変える。「One Agatha Project」を起点とした組織づくりを聞いた。
治験・臨床研究のDXを手掛けるアガサは、2015年の創業時からグローバルかつフルリモートで組織を運営してきた。現在は社員数が100人を超え、日本のほか、フランスや米国にもメンバーを抱える。「創業した時からグローバルだったので、私自身は『全世界でひとつの会社』という感覚が当たり前でした」と、代表取締役社長の鎌倉千恵美氏は振り返る。
創業当初は、鎌倉氏と前職からつながりのある海外メンバーらによる小規模な組織だった。10人程度に増えた段階でも、メンバーの多くが英語を使うことができ、コミュニケーションに大きな問題は生じていなかった。
変化が表れ始めたのは、事業が成長期に入り、日本市場での採用が増えてからだ。日本で営業やカスタマーサクセスなどの業務を担う上では、必ずしも英語力が最優先ではない。日本語を中心に働く社員が増える一方、日本と海外でそれぞれ制度や仕事の進め方が整備され、組織のあり方も少しずつ分かれていった。
事業は順調に拡大した。しかし、創業10周年を迎え、社員数も100人を超える中で、鎌倉氏は別の危機感を抱くようになった。「次の10年でグローバルNo.1を目指そうというときに、日本と海外のチームが一緒に成長していかなければ実現できません。しかし、社内を見ると『このままではバラバラになってしまうのではないか』という感覚がありました」(鎌倉氏)。
社員とともに成長してきた一方、会社としてその成長を支え、一体となって働くための仕組みを十分に用意できていない。鎌倉氏は、経営者としてそう感じたという。
同じ時期、人事部門が社員アンケートを実施した。定量回答に加え、約300件に及ぶ自由記述も集まり、コミュニケーションがスムーズに進まない、物事を円滑に前へ進めにくいといった課題が浮かんだ。
例えば、日本側からは、海外の社員がそれぞれどのような役割を担っているのか分からない、という声もあった。確認してみると、全社員の役割を一覧できるものが整っていなかった。
問題が起きた際にも、それぞれに「正しい」認識がある。あるチームでは予定通り進んでいると思っていても、別のチームから見れば遅れている。追加の要望を出せばスケジュールが変わることを、一方は当然と考え、もう一方は異なる認識をする。小さな行き違いが重なることで、「こちらはやっているのに、向こうがやってくれない」というフラストレーションにつながっていた。
こうした課題を踏まえ、2026年初めに立ち上げたのが「One Agatha Project」だ。改めて全社の一体感をつくり、次の成長につなげることを目...

