「伊藤忠らしさ」は、どう伝わるのか IR Dayで示した成長ストーリーの確からしさ

公開日:2026年9月30日

  • 伊藤忠商事

企業の強みや価値観は、言葉として整理するだけで十分に伝わらない。伊藤忠商事が2026年7月に初めて開催した「伊藤忠商事 IR Day ~ITOCHU DAY 2026~」では、8つのカンパニーのトップらが一堂に会し、自らの言葉で投資家に成長の考え方を語った。重視したのは、「伊藤忠らしさ」を、経営陣を通じて伝えることだった。

POINT

1.「企業らしさ」は、言語化するだけでなく、経営陣自身が語ることで伝わる

2. 成長ストーリーには、数字だけでなく「誰が実行するのか」という確からしさも必要

3. 複数の媒体・接点を重ねることで、企業価値への理解を立体的に深める

決算説明会、統合レポート、事業説明会など、上場企業には投資家に情報を届けるためのさまざまな接点がある。その中で伊藤忠商事は2026年7月、同社として初となる「伊藤忠商事 IR Day ~ITOCHU DAY 2026~」を開催した。

IR部長の原田和典氏は、IR Dayの役割について「会社の根幹を説明する場」だと表現する。「IR Dayというのは、その時の戦略やビジネスモデルなど、会社の根幹を投資家に説明し、コミュニケーションを取る場だと考えています。私たちにとって初めてのIR Dayだったからこそ、改めて今の伊藤忠商事を見てもらう場にしたいと考えました」(原田氏)。

その考えを象徴するのが、登壇者の顔ぶれだった。伊藤忠商事には、繊維、機械、金属、エネルギー・化学品、食料、住生活、情報・金融、第8という8つのカンパニー(事業セグメント)がある。今回のIR Dayでは、そのトップ全員が登壇。社長をはじめ、現在の経営を担うマネジメント層が広く投資家の前に立った。

複数の事業領域を持つ企業がIR Dayを開催する場合、特定の事業だけを取り上げることも少なくない。しかし伊藤忠商事では、まずは「現在の会社のありのままの姿を見せる」ことに意味があると考えた。

もちろん、営業の最前線を担う各カンパニーのトップを一堂に集めるのは容易ではない。開催に向けた調整は半年以上前から始まった。また、普段から投資家との対話に慣れている経営陣ばかりでもなかった。

IR部シニアマネジャーの息えりか氏は、「事業部門を率いるトップが日々向き合っているのは、お客様です。そのため必ずしも、投資家の皆さんとコミュニケーションするのに慣れているわけではありません」と振り返る。

そして実際に投資家を前にすると、登壇者側にも変化が生まれたという。「これまで投資家と直接話す機会が少なかった人もいました。実際にその場に立つことで、『投資家はこういうことに関心を持っているんだ』と分かった。IR部から説明するだけでは得られない理解があったと思います」と息氏は話す。

原田氏は、ここにIR Dayのもうひとつの意味を見る。「企業価値は、会社の中だけでつくれるものではありません。マーケットから評価されて初めて企業価値...

この先の内容は...

『広報会議』 定期購読者限定です

ログインすると、定期購読しているメディアの

すべての記事が読み放題となります。

購読

1誌

あたり 約

3,000

記事が読み放題!

この記事をシェア

この記事が含まれる特集

見えない価値を確かな強みに変える 広報・IRの役割とは

人的資本、知的財産、サステナビリティ、組織文化──。企業を評価するうえで、財務諸表には表れにくい情報への関心が高まっています。投資家だけでなく、顧客、従業員、取引先など、さまざまなステークホルダーが企業を見るなかで、何を開示し、どのように説明するかは、経営にとっても重要なテーマになっています。ただ、非財務情報を数多く開示すれば、その企業の将来性や競争力が伝わるとは限りません。重要なのは、それぞれの情報が事業とどう関係し、どのような成長につながるのかを示すことです。財務と非財務を別々に語るのではなく、両者をつなぎ、一貫した企業像として伝えることが求められています。本特集では、この課題を「ブランド・エクイティ・ストーリー」という視点から考えます。財務と非財務を結ぶ考え方、投資家との対話、自社固有の価値の言語化やブランド再定義など、複数の角度から企業価値をめぐるコミュニケーションを捉えながら、広報・IRがその接点で果たす役割を、理論と事例の両面から探ります。

MEET US ON