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社名変更・ロゴ刷新における目標設定とリスク管理

公開日:2025年5月30日

  • 片岡英彦氏(東京片岡英彦事務所)

「広報関連の新たな企画を実現しようとするも、社内で企画書が通らない……」。そんな悩める人のために、広報の企画を実現するポイントを伝授。筆者の実務経験をもとに、企画書作成に必要な視点を整理していきます。

見た目の刷新に留まらないコミュニケーション設計

企業名の変更やロゴの刷新は、組織にとって大きなターニングポイントとなる。ブランドイメージを印象づけ、経営ビジョン全般を社内外に向けて再共有する好機でもある。その際に広報部門が重視すべきは「企業ブランド強化へいかにつなげるか」だ。単なる見た目の刷新に留まらないよう、整合性のあるコミュニケーションの設計やリスクマネジメントを担うことが求められる。今回は、社名変更やロゴ刷新による企業のコーポレート・アイデンティティ(CI)強化をどう後押ししていくかを取り上げる。リブランディングのコンセプト策定からリスク管理、運用フェーズの評価について、広報部門として押さえるべき戦略について整理していく。

視点1
リブランディングと広報の役割

社名・ロゴ刷新=CI全体の強化

社名やロゴなど“ブランドの顔”を変えるのは、大きなリソースを要する一大プロジェクトだ。顧客や取引先、従業員への配慮が求められ、ブランドイメージの定着には一貫したメッセージ設計が欠かせない。場当たり的に進めれば「なぜ今変えるのか」「愛着のあった旧ロゴを捨てる理由が不明」といった反発を招くリスクも潜む。大切なのは、社名やロゴに込められたコンセプトを活かし、企業文化や従業員の行動に変化をもたらすことだ。見た目だけが新しくなっても中身が変わらなければ、形だけのリブランディングに終わってしまう。広報部門は「ロゴや社名を刷新する行為=CI全体を強化する」という視点に立ち、従業員への説明からメディアへの発信まで、一連のメッセージ設計をつかさどる司令塔として、コミュニケーションを牽引したい。

そもそもCIとは、企業がどんな理念や価値観を持ち、社会に対してどのように存在意義を示すのかを一体的に表す仕組みだ。ロゴやカラーといったビジュアル・アイデンティティ(VI)はその一部に過ぎない。企業のパーパスを中核とし、それを実現するためのビジョン・ミッション、経営理念といった根幹の考え方(コーポレート・フィロソフィ)、日常業務や組織文化に落とし込まれる行動指針など、あらゆる次元で、企業が何者かを体現するのがCIである。デザインやネーミングを外部や専門部署に委託する場合でも、それをどう伝え、どう企業価値の向上につなげるかは広報の手腕にかかっている。

社名変更・ロゴ刷新が与えるインパクト

社名やロゴの変更は、企業認知を再構築し、ブランドイメージを一新するという大きなインパクトをもたらす。既存顧客は「あの会社が新しい一歩を踏み出した」と興味を抱きやすくなるだろう。新規顧客にとっては「どんな企業なのか」と関心を寄せるきっかけになる。一方で、長年親しまれた名称・デザインが変わることには、抵抗感や戸惑いもつきまとう。SNSをはじめオンラインの場で、ネガティブな反応が一瞬で拡散するリスクも考慮すべきである。「意味が伝わらない」「前のほうが良かった」といった声が一定数集まると、ブランドイメージを損ねる恐れすらある。社名・ロゴ変更を計画する段階からステークホルダー分析を丁寧に行い、目的や背景を分かりやすく伝える準備をしておく必要がある。また、変更後は、オンライン・オフライン問わず多岐にわたるコンタクトポイントで徹底して新CIを展開する必要がある。抜本的にブランドイメージを刷新するからこそ、成功時には企業の躍進を強く後押しする効果が期待できる。

広報部門の重要性

社名変更やロゴ刷新を含むリブランディング戦略では、経営陣やマーケティング部門が方向性を決める一方、ステークホルダーの理解と共感を得るための具体的アクションを設計し実行するのは広報の領域だ。新しいビジョンやメッセージを効果的に伝え、変革の意義を社内外に浸透させるために、広報部門が果たすべき役割を図1にまとめた。

図1 リブランディングにおける広報部門の役割

① メッセージの統括:経営トップの意図を「社会に伝わる言葉」へ翻訳し、プレスリリースやSNSでのストーリーを設計する

② 社内浸透:イントラネットや説明会などを通じて、従業員が変更理由を理解できるようにし、外部発信と内部実態の一貫性を確保する

③ メディア活用:ニュースバリューの高いCI刷新を、これまで築いてきたメディア・リレーションズを活かして効果的に発信する

④ リスク対応:批判や混乱が生じた際に迅速に対応し、ブランドイメージの毀損を最小限に抑える

これまでCI刷新のプロジェクトにおいて、私は広報部門の関与が後回しにされる事例を数多く見てきた。「デザインが決まってから広報に伝えれば良い」という認識が、結果的に社内外での混乱を招き、せっかくの変革効果を半減させてしまうのだ。経営層とデザイン会社だけで進めた新ロゴが、従業員に疑問を抱かせ、説明不足から社内の反発を招き、社外への発信力が弱まったケースもあった。一方、広報部門をプロジェクトの早期から中心に据えた企業では、従業員が「自分ごと」として新CIを受け入れ、顧客への説明も自然と主体的になり、説得力を増していた。リブランディングの本質は「見た目」ではない。「伝わるストーリー」にあることを忘れてはならない。

視点2
リブランディング戦略の設計

目的とコンセプトを明確化

社名変更やロゴ刷新の背景には、経営戦略上の転換やM&A、海外市場への進出、新規事業へのシフトなど、様々な要因がある。どれほど優れたデザイン会社を起用しても、リブランディングの目的やコンセプトが曖昧だと“見た目の変更”に留まりがちだ。そこで重要になるのが「リブランディングをどのように企画し、...

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